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ICT環境の地域格差解消と活用能力の向上を目指して  

2016年 5月 16日  <10面>

「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」中間取りまとめ
稲垣 忠・東北学院大学准教授(懇談会座長代理)

 次期学習指導要領改訂においてアクティブ・ラーニングへのICT活用の期待が高まる中、文部科学省は2月15日から、大学や行政、民間企業などから選任された委員で構成される「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」(座長=清水康敬・東京工業大学名誉教授)を開催し、このほど中間取りまとめを発表した。懇談会の狙いや主な論点、教育の情報化推進に向けた課題点を座長代理の稲垣忠・東北学院大学准教授に聞いた。

「スマートスクール構想」実現の方向性は

ICTを教師と児童・生徒の道具に
 今回の「中間取りまとめ」に至るまでの基本的な考え方として、次の3点が挙げられます。
 一つは授業と学習の両面を含めたICT活用のあり方や推進方策を整理すること、二つ目に地域格差解消のため国や自治体、学校や家庭の役割やあり方に踏み込んだこと、三つ目に「スマートスクール構想」を提言したことです。
 教育の情報化に関する施策はさまざまな形で行われてきましたが、先進的に取り組む地域がある一方で、環境整備をなかなか進められない地域もあるのが現状です。懇談会は自治体の取り組みの差が地域間の教育格差につながることを懸念し、その解消を図ろうという意識のもと議論を進めています。
 一つ目については、学校の授業での活用にとどまらず、放課後や家庭での学習も含めたICT活用をイメージしました。先進的な取り組みや高度な活用事例は、これからの学びを考えるモデルにはなりますが、環境整備が追い付かない地域や学校で実現することは難しいものもあります。ICTが苦手な先生方が活用を敬遠してしまうことも考えられます。
 そうではなく、もっと「当たり前」の使い方が広がってほしい、実物投影機とプロジェクターを使って実物を見せるといった活用は、すでに多くの先生が日常的にICTを使う姿として広まってきました。タブレット端末の活用も日常的・継続的に活用できる方法を整理・普及していくことが必要です。
 児童・生徒にとっても同じです。現在のタブレット端末は、授業での活用だけでなく放課後や家庭で個別学習や繰り返し学習で使うことにも適しています。また、情報の収集・編集・発信といった学習の流れや、プログラミングなど情報教育に関わる学習活動の充実も求められています。アクティブ・ラーニングに向けて、児童・生徒が自分の学びの道具としてICTを活用していくための推進方策が整理されていくことを期待しています。

環境整備を推進する推進計画策定のあり方
 二つ目の環境整備、地域格差解消については、自治体が責任を持って推進体制を作れるよう、国がどうバックアップすべきかを議論しています。第2期教育振興基本計画では教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数を3・6人とハード面の目標水準を掲げていますが、自治体や学校間で格差が生じています。
 原因の一つは、教育の情報化の効果を示すエビデンスや整備指標が十分に共有されておらず、自治体で先を見通した推進計画を策定できていないことにあります。モデル事例を通して子どもの資質や能力の育成に教育の情報化がどのように貢献するのか、そのためには何を、どの程度、整備していく必要があるのかを見える形にしていくべきだと考えます。
 佐賀県や大分県のように都道府県がビジョンを掲げて数値目標や計画を設定する動きも出てきています。直接の予算付けがなくても県の方向性が明確なら市町村の計画立案や予算計上への後押しになります。今後は自治体が主体的に環境整備の目標を設定できる方法を話し合う予定です。

インフラとしてのスマートスクール構想
 三つ目の「スマートスクール構想」は2020年以降を見据えた、前述の二点から少し時間的距離のある展望として議論を始めています。スマートスクール構想とは授業や学習におけるICT活用と校務支援の情報化をつなげ、統一的に扱うことで学校経営を改善していこうというものです。
 例えば、授業でICTを活用すると子どもの学習履歴が蓄積されます。それを児童・生徒一人ひとりの個に応じた学びや先生の指導力向上、校務の効率化につなげられる環境のことです。
 「子どもや教師を管理するツールになるのでは」と心配する声もありましたが、むしろ自治体の学校マネジメントやインフラ整備の観点からとらえています。スマートスクールのもとで先生一人ひとりの豊かな実践を作ることや、子どもの興味・関心を伸ばす環境がより整うというイメージです。
 スマートスクールは1人1台のコンピュータ環境と、しっかりした校務支援システムが前提になります。じつはここをクリアするには多くの課題があります。
 1人1台環境を整えるには自治体間の共同調達や共同運用、クラウド活用なども視野に入ってくるでしょう。端末の保護者負担や家庭用情報端末を学校で利用する可能性もありえます。
 さらに、個人情報などのセキュリティ面で関係者の合意形成や法的整備も必要になると考えられます。それらの課題はワーキンググループを別に立ち上げて整理することになっています。全体の議論をまとめ7月に最終報告を提出する予定です。
 いまのテクノロジーは学校の授業の枠におさまりきれない特性を持っています。インターネットを介してさまざまなものが通信機能を備えインターネットを介して情報のやりとりができる「IoT(Internet of Things)」の時代が来ています。スマートフォンの普及が10年前に予想できなかったように、あと数年後には新たな端末や通信方法が主流になる可能性もあります。
 テクノロジーは変化してもそれらを活用している子どもの反応や考えを取り上げたり見極めたりしながら授業を展開する力を先生方には発揮してほしいと願っています。
 そのためには、ICTを活用して「学校でどんな授業ができるか」という発想だけでなく、放課後や家庭も含め「子どもたちがどんな“学び”ができるか」を探る視点を、教育関係者全体が持つことが、これからの学びを考える出発点になると考えています。


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