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熊本地震における学校施設被害  

2016年 7月 18日  <12面>

 前震(最初の震度7)発生から14日で3カ月を迎えた、平成28年熊本地震。28時間以内に震度7が2回発生する大きな揺れに、熊本県内の学校施設も大きな被害を受けた。熊本市の状況から、発生した被害の状況や地震発生前に行っていた対策の成果、避難所としての状況と求められる機能などを見てみる。

熊本市は全校何らかの被害
 熊本県教委が、文科省の「熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会」で実施した説明によると、県内の公立学校394校(全体の66%)が被災。構造体の耐震化が進んでいたために倒壊した建物はなかったが、非構造部材の耐震対策未実施の153棟で多くの被害が報告されている。
 震源地に近い東区をはじめ、市内各地で大きな被害を受けた熊本市。高校の体育館1棟を除き耐震化が終了していたため倒壊した建物はなかったが、市立小・中・高校139校、幼稚園8園は全て何らかの被害を受けた。
 倒壊しなかったが、内外壁や柱のひび割れ、渡り廊下接続部の破損などがあり、応急危険度判定で「使用禁止」となった建物が市立中学校4校に存在する。その中の1校、市立東野中学校(松永洋校長)は、北校舎が使用禁止となっている。

増築部分のつなぎ目が大きく破損
 全学級の教室が入るなど、子どもたちの学校生活の中心となっていた東野中学校の北校舎。昭和36年築の教室部分にトイレや給食配膳室などを増築しており、計6棟で1つの校舎を構成している。
 下から突き上げるような揺れがあったと考えられ、廊下は波打ち、教室の床は傾いている。教室と廊下の間のアルミ製の建具が大きくゆがみ、窓ガラスも何枚か割れていた。
 増築部分のつなぎ目(エキスパンションジョイント)も大きく壊れ、周辺の内壁や吊り天井が落下している。北校舎と南校舎を結ぶ渡り廊下の接続部も破損し、建物が沈み込んだ可能性がある北校舎との間に10センチ程度の段差もできた。
 「机が飛び上がる状況もあり、日中の地震だったら生徒がパニックになったと思う。夜の発生だったことが、不幸中の幸いだった」と、松永校長は話す。
 職員室のドアが開いたままになるなど管理棟(南校舎)や東校舎にも被害はあったが、注意しながら使用することができている。
 現在、生徒たちは管理棟にある特別教室、平成に入ってから建てられ被害がなかった体育館棟(体育館・武道場・技術室)を教室として使い、学校生活を送っている。体育館の中はパーテーションで区切り、5つの教室に分けられている。
 校庭では、夏休み中の8月中旬の完成を目指し、仮設校舎の建設が進んでいる。文科省の災害区分判定の結果によると、北校舎は「建て替え」とされた。

 熊本市内全体でみても、渡り廊下の被害が大きかった。渡り廊下は2つの校舎の間に挟まれており、それら校舎の揺れ方が違うために建物同士がぶつかることで壊れてしまう。
 一方、窓サッシや窓ガラス、照明器具などの被害は少なかった。現在のアルミサッシは耐震性があってガラスも割れにくくなっており、熊本市では大規模改修で新しいサッシに変えていたため、被害が少なかった。照明器具についても新しい物に更新されており、落下などは少なかった。

体育館内壁などの被害で25校が使用中止
 熊本市内の小・中・高校の体育館については、3校を除いてフロアの吊り天井の撤去が完了していた。本年度撤去予定だった3校の天井も新しいものを使用しており、落下の被害はなかった。照明についても、新しいものに交換した時にワイヤーで吊るなど対策を取ったため、ほとんど落下しなかった。
 被害が発生したのは、フロア吊り天井と照明器具以外の非構造部材。ブレースの破断や外れ、可動式バスケットボールゴールの止め金具の落下、ステージ上の吊り天井の落下などがあった。特に被害が大きかったのは体育館妻側の内壁で、古い建物を中心に落下した所が多かった。
 これら被害の結果、発生直後から25校の体育館を使用中止にして、避難者を校舎などに移動させた。市教委施設課の山口英二課長は「体育館妻側の内壁は、特に早く対策を取る必要がある。現在はボード類など軽い素材があるので、そうした材料を使うような改良をしていける」と話している。

災害時の避難機能充実へユニバーサルデザイン化を
 地震発生直後、熊本市立小・中・高校は全139校が避難所となり、体育館または教室を開放した。最も多い学校では、最大2500人の避難者を受け入れた。現在も東区を中心に、7日時点で5校が避難所となっている。
 水や食糧、毛布などは学校に備蓄されていたが数が足りず、東野中学校では体育館の床に敷くシートを切って急場をしのいだ。
 停電や断水のため、特に困ったのがトイレの水。雨水を使う「中水道設備」がある少数の学校はトイレが使えたものの、大部分の学校はプールの水をくみ出して使用した。
 しかし、その作業は重労働であり、苦労した学校も多かった。地元の消防団がポンプを使ってプールの水をくみ上げて使用した学校の例があったことから、同市では各学校にくみ上げポンプを設置することを検討する。
 また、4トン程度の水を常時ためることができ、その水を非常時にも使用可能な「貯水機能付き給水管」を28校に導入していた。給水に役立っており、今後も古くなった給水管の更新時に導入を進めていくとしている。
 また、学校施設が災害時に避難所機能を求められることも、改めて浮き彫りになった。体育館への多目的トイレとシャワーブース・更衣室の設置、トイレの洋式化、教室へのエアコン設置、校舎へのエレベーター設置など、学校施設全体の機能改善が必要となる。
 今後、熊本市では、学校施設を避難所として十分対応できるようにするための整備の方向性を考える。山口課長は「学校は地域の核になる施設。地域の人たちが誰でも使いやすくしておくことが求められる。ユニバーサルデザイン化を進めることが必要」と話した。


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