日本教育新聞社
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広がる1人1台端末の活用
カテゴリ : ICT教育特集
 児童生徒1人1台端末の活用が広がっている。安定稼動できる環境整備や授業で使えるコンテンツの充実、1人1台環境に適応した指導スタイルの確立など課題もあるが、次期学習指導要領のキーワードとして挙げられるアクティブ・ラーニングを実現するツールとしての期待も高い。先進的に活用に取り組む学校を取材した。

新規プロジェクトで実証研究
持ち帰り学習のデータを分析
京都市立西京高等学校附属中学校

 京都市立西京高等学校附属中学校は12月4日に公開授業を行った。
 同校は、京都市教育委員会・京都大学・企業と連携し、生徒1人1台のタブレットPC学習環境での実証研究「京都ICT教育モデル構築プロジェクト」を昨年6月に開始した。
 研究では、中学3年生120名の生徒が、タブレットPCを持ち、校内と自宅で学習する。タブレットPCを利用した授業、およびPCの持ち帰り学習におけるログを収集・解析することで、学習パターンと学力の相関関係を分析する。そして、生徒の学習データから、学びの変化を検証することで、生徒1人1人の状況にあわせた個人適応型の教育の実現を目指していく。
 この日は理科、数学、保健の3つの授業を公開。岡本麻美教諭が指導した保健「喫煙の害と健康」は、生徒が喫煙の害について関心を持ち、課題解決を目指して科学的に考え判断し、理解したことを表現したりすることが目標だ。
 教諭はまず、前時の振り返りのワークシートを各自のタブレットPCに配布し、生徒を指名して書き込ませたり、答えさせたりした。
 次に、タバコについてのアンケートを実施。「タバコを吸おうと思っていますか?」「喫煙者はタバコに害があることを知らないと思いますか?」「正直、一本ぐらいなら経験で吸うかもしれない?」といった質問にタブレットで回答させ、回答状況を即時に電子黒板に提示して生徒の学習への関心を高めながら、本時のねらい「防煙と禁煙について考えよう」へ展開した。
 ここでは「害があることを知りながらなぜ吸っているのか」について、再び各自がワークシートに書き、その内容を発表・共有した。続いて、「喫煙率0にするためにはどうすればよいか」をオープンノート用のワークシートに記入。その後、班に分かれて、基本的な喫煙の知識をもとに対策を考えた。
 生徒からは「ストレスが原因で吸っている人が多いと思うので、気軽に相談できる社会にしていく」「タバコを吸うことがかっこいいイメージがあるので、それを払拭していく取り組みが必要」「親が喫煙の害についてしっかりと教えることが大事」といった意見が出ていた。
 授業では、生徒の関心を高めたり、生徒の考えの発表・共有したりするのにICTが効果的で、テンポのよい授業を生んでいた。
 公開授業後には、本プロジェクトの概要説明が行われ、そのなかで飯山将晃・京都大学学術メディアセンター准教授が持ち帰り学習データの分析について報告した。
 持ち帰り学習は5教科(国、社、数、理、英)で実施。毎週末に1教科ずつ出題した。
 解答時間からは放課後に宿題を片付けたり、朝になって急いで宿題をやる傾向が見られた。また今回は電子ペンを活用してペンの移動軌跡やストローク間隔といった筆記速度を確認できるので、解答に至るプロセスのどこでつまずいたのかを分析した。
 飯山准教授は「問題を読み取るのに時間をかけたり、計算間違いをするときはよどみなく間違えるといったことがわかった。こうした個別の学習者の振る舞いを知ることでだけでなく、解答速度の相対的な違いを比較して可視化し、指導の充実につなげることできるのでは」と話していた。

問題解決と協働的な学びに
ICTを積極活用
大阪市立阿倍野小学校

 大阪市立阿倍野小学校では平成24年12月からの大阪市教育委員会「学校教育ICT活用事業」モデル校の指定に引き続き、平成27年12月からは3年間の大阪市教育委員会「学校教育ICT活用事業」先進的実践研究校の指定を受け、ICT活用に長年取り組んでいる。
 昨年10月24日には「ともに学び合い、学びを深める子どもの育成―ICTを活用して、コミュニケーション能力の向上を目指す―」をテーマに公開授業を行った。
 同校では、ICTを活用した授業づくりの基本的な考え方として、問題解決と協働的な学びでの有効活用を模索している。
 そのために、問題解決的な学習の基本的な流れを授業場面に分けて整理。問題を設定する、学習問題を追究〜解決する、結論の導出・吟味し活用するといったシーンごとに、ICTを活用する主なねらいを明確化している。
 例えば、授業のまとめにあたる結論の導出・吟味し活用の場面では、学習内容を深く定着させことができる活用、表現力を高めることができる活用といった具合だ。
 この日の公開された授業でもその様子が見て取れた。
 生田一恵教諭と黄本幸教諭が指導した3年生算数「三角形を調べよう」では、長さの異なる赤・青・黄・橙の4種類のストローから3本を選んで三角形を作った。
 前時に子どもたちは校内にある三角形を探して撮影・共有しており、その経験を生かした。
 作った三角形は撮影して写真カードをつくり、辺の長さに注目しながら分類。その後、2人のタブレットをつないで、タブレット上でカード受け取り画像を画面に配置してメモを追加できる協働学習アプリを使って、友達の考えを交流したり、全体で共有したりした。
 指導した教諭らは「友達の分類方法を手軽に知ることができ、試行錯誤もしやすかった」と話し、ICT活用による手応えを話していた。