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九条俳句訴訟と公民館の自由

16面記事

書評

佐藤 一子・安藤 聡彦・長澤 成次 編著
社会教育の意義学ぶ好機に

 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。句会メンバーが詠んだ句の公民館だよりへの掲載を拒否した事案が社会問題化した。
 さいたま地方裁判所が平成29年10月13日、掲載しない理由そのものが撤回、新たに伝えられるなど十分な検討が行われていないこと、作者の思想・信条を理由に掲載しないという不公正な取り扱いをしたことなどによって「国家賠償法上、違法というべき」と、その不当性を指摘する判決を下した。その後、さいたま市は控訴したものの、30年5月18日、東京高等裁判所が控訴を棄却。上告と続く。
 本書は一審判決までの足跡をたどり、「九条俳句」不掲載の問題点や、地裁判決の意義、訴訟の争点と課題から、さらに社会教育施設などでの「学びの自由」を考察し、公民館、図書館、美術館にとどまらず、学校教育まで視野を広げて、問題の所在を論じた。
 一審判決の中には、教員から異動した職員たちが学校内での「日の丸」「君が代」議論に「辟易」とし「憲法アレルギー」となっていたので、十分な検討を行わず不掲載にしたのではないかと「推認」するくだりがある。
 問題が顕在化したことで、改めて市民にも社会教育や公民館の意義、存在理由が見直されたともいえる。教員出身者が社会教育の一部を担うという仕組みは、各地にあり、地域を担う“教員”たちにも、その意義を学び直す好機にしてほしい。
(1944円 エイデル研究所)
(吹)

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