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学校の「当たり前」をやめた。

12面記事

書評

生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革
工藤 勇一 著
担任、宿題、期末テストも廃止

 現実を変えたいと思っても行動には至らず悶々としている校長は多い。現実を変えるには想定を超える波風が立つ。それを承知で逃げずに、柔軟にして諦めず、粘り強い対話で実現している工藤校長が本音で語る。今こそ追従すべきリーダーに間違いない。
 「何のために学校があるのか」の問いに、躍動感を持って、実践を裏付けて回答のできる校長が何人いるだろうか。何度もキーワードが登場する。「『当たり前』に疑問を持つ」「目的と手段の観点から、改善を図る」「当事者意識を持たせる」「子どもたちを自律させる事」等々…。
 大きな対立があっても上位目的を見据えて対話を図れば、必ず合意形成に至るとの確信に貫かれた言動は神髄である。クラス担任は廃止。宿題は必要ない。中間・期末テストも廃止…等々。何と言っても学校の目標に象徴される生徒に自己肯定感を持たせたいと、工藤流にかみ砕き「世の中まんざらでもない! 大人って結構素敵だ!」と掲げている。
 山形の一青年教師が東京で奮戦し、新宿区教委の指導課長となり、現千代田区立麹町中の校長としての実践をここまで自己開示して書かせた思いが熱い。「君がやらないで誰がやる。リスクを負った経験を積み重ねてこそ、本物のリーダーになれる」と生徒に声を掛けるその言葉こそ私自身への覚悟と、記しているところが気に入った。半端ない校長の出現である。
(1944円 時事通信社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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