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無償教育と国際人権規約

13面記事

書評

未来をひらく人類史の潮流
三輪 定宣 著
豊富なデータ基に政策を批判

 国際的な視点からの指摘は、ごもっともと感じられる。確かに「教育を軽視した国が永く栄えることはない」と先人は指摘している。
 校長の頃、明らかに不適な資質と言動の教員の勤務評定を低くして提出したところ、書き直すように教委から指導があった。すなわち茶番劇の評価であり、もめないように、面倒にならないことを願っていることが分かり、がっかりしたことを今でも鮮明に覚えている。「教師のための子どもか、子どものための教師か」と、問われ、自己評価し身の処し方を再考する教師は何人いるだろうか。
 本書の特徴は、巻末にある資料すなわち根拠の数にある。そして体制への批判に容赦がない。その批判が根拠に基づいて書かれようとしているから読み応えがある。確かにこれまでの、または今後の政策への批判が多く記されているが、教育の中立、中庸を維持するためにも、こうした見方があることを俯瞰して色眼鏡を外して考える時が来ている。
 大学生に「何のために大学に来たのか?」と問うと、お粗末な回答が多い。私は「大学へ行きたくとも行けなかった人のために来ているのでは」と答えている。一方で、現在の学生には勉学に没頭できる環境での格差が強く感じられる。最前列で目をこすりながらも学ぶ学生のほとんどが、バイト疲れである。教育のための政治であり行政であってほしい。
(2376円 新日本出版社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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