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ポートフォリオ導入が広がる。一体どんな仕組みなのか?

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特集 教員の知恵袋

 生徒の学びの記録を電子データ化した「eポートフォリオ」を大学受験に導入する動きが広がってきました。学習の達成に至るプロセスを見ることで1発勝負の入学試験で測ることができない個人の能力を評価しようというわけです。大学の注目を集めているeポートフォリオがどのような仕組みなのか、詳しく見ていくことにしましょう。

生徒が学習や活動記録をネット上に記録する「eポートフォリオ」

 ポートフォリオは英語で書類を運ぶファイルを指します。生徒の学習履歴や表彰歴などを紙媒体に記録したものが「学習ポートフォリオ」で、これを電子データ化したのがeポートフォリオです。

 一般に生徒がパソコンやスマートフォンを使って学校内外の活動記録をインターネット上のサイトに書き込みます。記録されるのは探究活動、生徒会活動、留学、部活動、表彰歴、資格・検定結果、学校行事など。成果だけでなく、生徒が感じた教訓を書き込めるほか、文章に加えて写真や図表、動画、音声も記録できます。記録は教員と共有され、進学や就職、個々の指導に活用されます。

主体性評価の大学入試改革が普及を後押し

 文部科学省は2021年度から始まる大学入試改革で「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」とともに、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ姿勢」を総合評価するよう大学に求めています。そのため、今後は主体性評価の資料となる学びの活動記録の提出を求める大学が増えそうな状況です。

 これまでも推薦やAO入試では、調査書と面接で主体性を評価していましたが、大規模大学の一般入試では人数の関係で実施に限界があります。それを解決してくれそうなのが、eポートフォリオです。調査書作成にかかる高校教員の負担も大幅に軽減されるとみられています。

生徒と教員の双方に大きなメリット

 eポートフォリオの活用は、生徒と教員の双方にさまざまなメリットをもたらしてくれます。単に受験する大学へ提出する調査書代わりになるだけではありません。

・身に着けられる主体的な学習サイクル
 学習や活動の記録をつける生徒側に大きいメリットは、振り返りと次の目標設定を繰り返すことで、主体的な学習サイクルを身に着けることができる点です。

 自分の学んできたことや興味を持ったことなどを振り返れば、将来の目標や進路を決定する際に、大いに参考になるはずです。電子化されているため、いつでも記録できる便利さも備えています。

・生徒の指導や授業の改善にも効果
 eポートフォリオのもう一つの特徴は、教員とデータを共有できることです。その結果、教員は生徒の学習履歴を見ながら、本人に最適の指導が可能になりました。また、生徒とのコミュニケーションをさらに密にできるほか、今後の授業や指導方法の改善につなげることもできます。

多数のeポートフォリオシステムが登場

 現在、eポートフォリオは多数のシステムが開発され、利用が始まっています。

 主なものは文科省の委託事業で開発された「ジャパンeポートフォリオ」、ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社が運営する「クラッシーポートフォリオ」、ベネッセコーポレーションの「ベネッセマナビジョン」などです。

・文科省の委託で開発のジャパンeポートフォリオ
 ジャパンeポートフォリオは文科省の委託で関西学院大学などが開発した高大接続ポータルサイトです。受験生が高校時代に学びのデータを記録し、証拠となる書類などを添付して志望する大学へ提出します。

 3月末時点で全国の高校約3300校と生徒約20万人が参加しており、2020年度の大学入学試験では神戸大、金沢大、首都大学東京、同志社大、関西学院大など27校が活用する予定です。
 ※2019年4月より「一般社団法人教育情報管理機構」運営

・ベネッセとソフトバンクのクラッシーポートフォリオ
 クラッシーポートフォリオはベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社「クラッシー」が運営しています。東京学芸大とベネッセコーポレーションが全国の中学、高校で進めた実証研究を基に開発しました。

 さまざまな学習や課外活動、テストの結果、教員からのフィードバック情報などを一元管理でき、目標を意識しながら日々の記録を整理するアルバム機能や学期末など、節目の時期に振り返りをしやすくした機能を備えています。カテゴリー別に分類して生徒の記録を蓄積でき、教員が指導しやすくしているのも特徴です。

・2018年から提供中のベネッセマナビジョン
 生徒の就職、進学情報を提供するベネッセマナビジョンが2018年から提供しています。

 生徒自身が自分の日々の活動を記録し、大学入試改革で求められる「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を向上させられるように工夫しており、過去に受けたベネッセの模試の結果を振り返り、自分の成績を参照する機能がついています。

生徒の主体的学びの促進剤に

 eポートフォリオは生徒の主体的な学びを促進するのにも大きな効果が期待できます。しかし、eポートフォリオの利用率は高くありません。

 今後、生徒が使いこなせるよう高校で十分な指導が必要になるでしょう。大学入試にあたっては志望校でeポートフォリオがどのように評価されるのか、事前に確認しておきたいところです。

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