「『通常学級で学べる子は学びの場の変更を』次期指導要領解説で提示へ」背景は?前編
NEWS4月22日に配信した記事「『通常学級で学べる子は学びの場の変更を』次期指導要領解説で提示へ」に対して多くの反響が届いた。記事内容の背景について、2回に分けて解説する。
年間通して障害に応じた指導
今回の案は突然出てきたわけではなく、これまでの特別支援教育施策の流れの中にある。
特別支援学級は、障害のある児童・生徒を対象に、年間を通じて障害に応じた学習や生活に関する指導をすることを前提に編制する。小・中学校の学級であるため原則、小・中学校の学習指導要領に基づく教育が求められるが、障害の状態によっては、通常の教育課程をそのまま適用することが適当ではない場合もある。
そのため、特別支援学級では自立活動を取り入れた上で、障害の状態に応じて下学年の各教科の目標や内容に替えたり、(知的障害がある場合のみ)知的障害者の児童・生徒に対する特別支援学校の各教科に代替したりする「特別の教育課程」を編成できる。
学級編制基準も8人という少人数の中で、特別の教育課程で障害に応じてきめ細かく指導できる体制を整えている。
「多様な学び」、整備目指すが
通常学級と特別支援学級では、学びの場も教育課程も異なるが、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が交流し合う機会の重要性は高まっている。現行学習指導要領ではそういった活動を実施する「交流及び共同学習」の充実を求めているが、実施時数の基準は学習指導要領改訂時点では定められていなかった。
一方、通常学級に在籍しながら受ける通級指導については平成5年の文部省告示で週1~8コマが標準とされている。知的障害は、一定の時間のみ取り出して行うことにはなじまず、特別支援学級で特別の教育課程で学ぶことが効果的として通級指導の対象に含んでいない。
文科省は連続性のある多様な学びの場の整備を目指しているが、特別支援学級や交流及び共同学習、通級指導の間では連続したものになっていなかった。このことについては文科省が令和元年度に設置した有識者会議でも指摘されている。
学活や給食は通常学級で
交流及び共同学習として、特別支援学級の児童・生徒が通常学級で過ごすケースも多い。同省は令和3年に改訂した「障害のある子供の教育支援の手引」で、学級活動や給食などは、可能な限り共に行うことが必要との考えだ。
教科の学習は、特別支援学級の児童・生徒が、授業内容が分かり、「学習活動に参加している実感・達成感を持って充実した時間を過ごしていることが重要」だとしている。
ただし、それは在籍している特別支援学級で編成した教育課程の目的や、児童・生徒の個別の指導計画に基づく指導目標の達成に向けて実施することが前提となる。
「通級」で不十分なら支援学級へ
手引では、通級指導だけでは特別な指導を十分に行うことが難しい場合に特別支援学級を選択するとしている。その上で、特別支援学級に在籍しつつも大半の時間を通常学級で学び、自立活動のための時間を相当時間確保しなくていいのであれば、通常学級に学びの場を移し、通級指導を利用することを求めている。
あくまで特別支援学級は「特別の教育課程で障害に応じた指導が必要」である場合に在籍する、というのが国としての考えだ。
同省が令和3年に、児童・生徒数に占める特別支援学級在籍の児童・生徒数の割合が高い10自治体を対象に実施した調査によると、授業時数の半分以上を通常学級で過ごしている児童・生徒の割合は、小学校54%、中学校で49%だった。ある自治体では特別支援学級の児童・生徒の97%が時数の半分以上通常学級で過ごしている一方、3%の自治体もあるなど、運用の差が大きいことが明らかになった。
文科省通知に賛否
おおむね通常の教育課程(≒授業時数の半分以上)学ぶことができる障害の状態であったり、支援体制を整備できたりするのであれば、通常学級に転籍して担任や特別支援教育支援員によるサポートを受ける、または通級指導を利用するという形にした方がよりインクルーシブになるのでは―。そういった国の考えを周知したのが令和4年4月27日付の「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」の通知だ。
「授業時数の半分」という基準を示したことに「障害のある子どもとない子どもを分離する」などとして教育界内外で議論になったが、同省は「むしろインクルーシブを推進するものだ」と通知の意図を説明する。
通知は、前述の有識者会議の報告書や、「令和答申」で「特別支援学級で指導を受ける時間が一定の時間に満たない者については通級指導の対象とすることを検討することもありうる」と記されたことなどを受けたとみられる。(後編につづく)
