日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

総合型選抜で広がる探究評価

10面記事

Topics

東北大学オープンキャンパスで、大学教員(中央)が高校生に研究内容を説明

 18歳人口の減少を背景に、大学入試は単なる「選抜」ではなく、高校と大学の「接続」にも重きを置くようになりつつある。学力だけでなく、探究心や主体性、学ぶ意欲を多面的に評価しようと、国立大学でも総合型選抜を拡大する動きが広がる。探究活動などで培った力を、大学教育にどうつなげるか。入試を通じた各大学の模索が続く。

挑戦続ける力、面接で問う

 平成12年度入試で総合型選抜(当時はAO入試)をいち早く導入した東北大学では現在、総合型選抜の入学定員比率が大学全体の3割を超える。
 同大学の総合型選抜は高い基礎学力を前提とした上で、探究心・挑戦する心といった人物の資質を総合的に評価するのが特徴。面接では、高校時代の成果そのものより「経験を次の行動へどうつなげたか」というプロセスを重視する。「野球部で3年間補欠でも続けられた理由は何か」といった質問を通じ、困難に直面しても折れずに立ち上がる力を持っているかを丁寧に見ていくという。副学長の滝澤博胤教授は「大学で研究を遂行するためには、学力だけではなく挑戦する心と折れない心が不可欠だ」と話す。
 成果は入学後の成績にも表れている。同大の追跡調査では、総合型選抜による入学者は、目的意識が高く、入学後の学びへの姿勢が一般選抜入学者と比べて積極的で、GPAでも高い傾向が確認されている。
 2050年には総合型選抜による入学者比率100%を目標に掲げる。実現に向けて、アドミッション機構の機能強化も進める方針だ。
 文科省によると、令和7年度入試で総合型選抜を実施する国立大学・学部はいずれも9割を超えた。国立大学協会は、当初「3割」としていた総合型と推薦型の割合について「入学定員の5割を超えない範囲」と引き上げている。

地域課題への関心度測る

 首都圏や大都市部への学生の流出が続く中、卒業後も地域社会を支える人材の確保が課題となっている。愛媛大学社会共創学部は、地域課題の解決に関心を持つ学生を募集しようと、平成28年度の創設当初から筆記試験を課さない総合型選抜を実施してきた。
 高校時代の探究活動や地域活動の経験を重視しており、選考では書類に加え、小論文やグループディスカッションを通じて地域課題への関心や主体性を見る。令和8年度入試では3学科計42人で募集し、141人が志願した。同学部の高橋学教授は「地域で自分を生かしたい、地域に返したいという高校生を受け入れていきたい」と話す。
 活動報告書や面接では探究学習やボランティア、部活動などの経験を評価する。高橋教授は「自ら動き、他者と協働できる力を評価していく」と強調する。一方で、地域活動への意欲を重視するか、基礎学力をより求めるかなど、学部学科ごとに求める学生像に違いもあり、模索が続く。
 効果を検証して、見直しに動く大学もある。京都大学理学部は特色入試(総合型選抜)の「数理科学入試」を令和10年度入試から廃止する。数理科学の分野で「極めて高い能力」を持つ学生を求め、4時間に及ぶ数学試験と口頭試問で選考していたが、理学部長の佐々真一教授は「導入から約10年が経過し、受験生側の入試対策が進んだことで、一般選抜との差異が薄れてきた」と廃止の理由を説明する。
 一方で、令和8年度入試では特色入試の「化学入試」に加え、女性募集枠も新設した。同学部は、1年次から必修科目を設けず、学生が自ら履修計画を組み立てるカリキュラムを採用しており、自律的に学ぶ力を重視する。特色入試は、そうした資質を持つ学生を見いだす機会と位置付ける。

高校3年間、進路学習と一体化

 高校では探究活動で培った力を進路選択につなげる動きが強まっている。
 東北を代表する進学校の一つ、山形県立山形東高校は探究学習と進路指導を一体的に進める。1年次から、将来何を学びたいかを基に探究テーマを設定。2年次に研究を深め、大学教員ら約70人が評価する発表会で助言を受ける。3年次には活動を志望理由書の作成などにつなげ、進路実現を図る。教育企画課長の佐々木隆行教諭は「総合型選抜の拡大が進む中、探究と進路学習を一体化した方が自然だと考え、体制整備を進めた」と話す。
 令和7年度入試では東北大学の合格者32人のうち、半数以上が総合型選抜で進学した。生徒全員がこうしたプロセスを経験するため、自身の適性や強みへの理解が深まり、総合型選抜におけるミスマッチの減少にもつながっているという。
 社会共創科を置く愛媛県立三崎高校は、地域課題に向き合う学習を重視する。今春は大学進学者の約半数が総合型選抜で進学した。松田猛教頭は「生徒は地域活動や探究の経験を持っているため、総合型選抜に挑戦しやすい」と語る。
 同校は高校入試でも、集団討論と面接による特色入試で定員の6割を確保している。高校入試、高校教育、大学進学までが一貫しており、「特別な受験対策はなく、3年間で培った力を発揮する場になっている」という。

Topics

連載