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クロスロード 交差する視点 18歳の先を見据えた改革を

10面記事

高校

児美川 孝一郎 法政大学教授

 今年2月、文科省は「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」を策定し、「ネクストハイスクール構想」と名付ける改革を始めた。2040年に向けて高校を「進化」させ、

 (1)AIに代替されない能力の伸長
 (2)国や地域の経済・社会発展を支える人材の育成
 (3)多様なニーズに応じた教育機会の確保を目指すという。

 確かに現在の高校教育には課題も多い。普通科の偏重で専門学科が弱体化し、社会や地域との接点も失われている。大学進学以外に、高校で学ぶことの意味をつかめない生徒も少なくない。高校改革は不可欠である。加えて、今回の改革の出発点には、私立を含めた高校授業料の無償化がある。公立高校の特色化と魅力化は、各地で喫緊の課題となっている。
 これまでの高校改革は、必要性や理念には共感が集まっても、改革に必要な「ヒト・モノ・カネ」が十分とは言えなかった。しかし、今回は違う。改革への財政支援を継続するため、「高校教育改革交付金」を創設し、安定財源の確保を図る。さらに、改革実行のキックオフとして、令和7年度補正予算には約3千億円が計上され、都道府県ごとの先導拠点の設置が目指された。こうした仕掛けが施された今回の高校改革には大いに期待したい。
 一方で、気掛かりな点もある。まず、改革を急ぎ過ぎていないかということだ。基本方針は2月に策定されたばかりだが、都道府県には5月半ばまでに先導拠点となる高校の選定と、「高校教育改革実行計画」の策定が求められた。
 もう一つは、理系人材の育成重視など、将来の就業構造の推計に沿って改革の方向性が定められているように見えることだ。しかし、若者の「やりたいこと」やキャリア設計は、将来の労働力需要に自然に合致したりはしない。18歳や22歳までの教育だけで何とかしようとするのではなく、就業後の「学び直し」の機会を抜本的に充実させ、その中で最終的に労働力需要を満たしていくという発想は取れないのか。
 その意味で高校教育に求められるのは、特定の進路へと早くから振り分けることではなく、生徒が長い人生の中で学び続けられる力を育てることだ。

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