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探究を取り入れた都立八王子東高校の修学旅行

12面記事

企画特集

八王子東高等学校の島津聡主幹教諭(左)、宇佐見貴子主任教諭(中央)、今井暉人教諭(右)

「問いから問いへ」の学びとなる優れた体験を

 “好き”を確かな学力にする探究学習プログラムのもと3年間探究に取り組む都立八王子東高等学校にとって、修学旅行と探究の接続は自然なことだという。どのように探究の素地を作っているのか、修学旅行に向けた探究教育活動のプロセスなどについて、島津聡主幹教諭(地歴公民科)と、2026年度の修学旅行を組み立てている宇佐見貴子主任教諭(家庭科)、今井暉人教諭(英語科)に話を伺った。

アウトプットして探究を深めるコースづくり

―探究活動が活発な八王子東高校。授業としてどのように取り組んでいますか。

 島津 探究活動を基軸とした教育活動の第一歩は、1年生のオリエンテーションです。問いの設定、課題の発見、調査検証、解決策の提案といった「探究の型」を身に付けながら興味関心の幅を広げます。探究学習を始めてみると、「分からないことは悪いこと」というマインドに縛られていると感じることがあります。「質問してごらん」と問いかけても手が挙がらない。「分からないことを隣同士で相談してごらん」と声掛けしても発言しない。分からないことは恥ずかしいことではないと気持ちをリセットするのも、実は大事なところです。
 1年生の後半からはグループ単位で、大学や企業、地域の方と連携し、生物、政治、医療、英字新聞、街づくりなど10のプロジェクトチームに分かれて課題解決プランを提案します。2年生からは個人でテーマを立て、自分の問いに対する探究へと学びを進めます。またゼミでは共通テーマを持った生徒で活動し、論文の作成で締めくくります。

―修学旅行の事前学習は「総合的な探究の時間」を使っているのですか。

 宇佐見 1年生はホームルームを、2年生では「総合的な探究の時間」の一部も使って探究的な修学旅行に取り組んでいます。探究の時間が確保されることで、個人、グループ、クラス……どんな単位でも学ぶ喜び、共に学ぶ充実感を持ってくれると感じています。

――修学旅行の行先の設定はどのようにしていますか?

 島津 本校では例年、平和学習をテーマの1つにしています。そのため、8年前までは広島と関西を回っていましたが、オーバーツーリズムの問題などが出てきて行先が変化しました。2026年度の2年生は九州で、福岡から入り、長崎に3泊します。平和学習以外にも自然科学、災害、信仰や歴史などコンテンツが豊富で生徒主体の探究旅行にできる地域、というのが決め手になりました。私たちも「探究学習を活かして新しい修学旅行をつくる」という意気込みを持って取り組んできました。

―生徒主体の探究旅行。事前学習はいつごろから?

 宇佐見 探究の型を学ぶところからと考えれば1年生の4月から、横浜での校外学習を経て、2年生の9月に長崎に行くまで長い期間をかけます。
 校外学習は幅広いテーマ設定ができ、新たな問いの発見の期待ができる場所として横浜を選びました。教員側で大まかなテーマ例を立て、必ず訪ねるチェックポイントをマークして提案。生徒はそれをもとに歴史、船、学問、建築など学習テーマを決め、事前調査によって生まれた問いから考察し、現地での経験で擦り合わせます。1年生の最後に、修学旅行に行く意味や何を学ぶのか、平和学習はなぜするのか?と問いかけ、修学旅行に対する自分の考えを一度整理する時間を持ちます。これは2年生での事前学習後と修学旅行後で、思いがどれだけ変化するかを確認するためでもあります。

1年生の横浜校外学習の様子

―修学旅行にはどのように探究学習を組み入れているのですか。

 今井 1日目は教員側から提示した場所の中から、クラスで組み立てたコースを巡ります。2日目の午前は個々に選んだ探究テーマ別コースを回り、午後はクラスごとに平和学習。3日目は班別の探究テーマに沿って学習し、最終日は学年で行動というスケジュールです。個人でも班でも探究活動をしています。
 探究のメインは3日目の班別学習です。事前学習と長崎市東京事務所の方にしていただく講演(長崎の地理、歴史、特産品など長崎の概要)から問いを立て、探究テーマを設定します。 講演の内容から深掘りしたいことを挙げる、関東と九州の文化を比較する、行ってみたい場所から考える……など、同じ興味関心を持つ人で班をつくり、現地でどのような探究活動を行うか話し合いを進めます。

―2日目の個人の探究テーマはどのように決めましたか?

 今井 私たちが下見をして、軍艦島クルーズ、佐世保軍港クルーズ、九十九島、島原ろうそく、がまだすドーム(雲仙岳災害記念館)、雲仙地獄、外海キリシタンの7コースに決めました。いずれも現地にある素材を生かした学びができるコースで、生徒は自分が選んだコースのバスに乗り込みます。
 下見で現地に行ってみると気付きがたくさんありました。例えば「島原ろうそく」は、100%日本産の植物を原料にしてすべて手作り。さまざまな日本の産業と結びつきながら継承されていることや、SDGsの要素も盛り込まれていることに感動し、ぜひ生徒に体験させてあげたいと思いました。長崎行きはこの学年からなので、私たちも新たな探究の舞台探しを楽しみました。

―どのコースも「体験」を大事にしているのですね?

 島津 見るだけでなく、体験してアウトプットすることで探究を深めたいからです。行くことが目的にならないよう、生徒に示すときはコンセプトを伝えます。2日目の平和学習も、事前学習で長崎被爆の語り部の方の話を聞き、現地では資料記念館を見学後、平和ファシリテーターのもとに「これからの平和のために何ができるか」を班ごとに考えるワークショップをします。これも平和学習における探究です。探究は五感で感じる体験とセットになっていると思っています。

八王子東高校における修学旅行事前学習の流れ

探究的なものの見方を習得してほしい

―修学旅行に探究を組み入れる意義は?

 島津 個人研究と修学旅行のテーマがひもづいていなくても、修学旅行では探究的なものの見方を習得してほしいと思っています。「現地に行って思考が深まったら新たな問いが生まれた」という体験に慣れていくことが大事で、それは別のフィールドでも生きるはずです。

 宇佐見 長崎市東京事務所の方の講演を聞いて、これを知りたい、これを現地でやってみたいと発想し、問いを立てることができたのは1年生からの探究活動の成果です。積み重ねが大事ですね。

 今井 「学びを修める」修学旅行には、探究は一番いい形だと思っています。興味関心のあるものを探究の目で見ると、感度が高まり、より深く見ようとするからです。現にその力は、横浜の校外学習のときに比べて付いてきていると感じます。事後のレポートを読むと、生徒の気付きの視点や細かさ、感性に感心することも多々。行って見て本物に触れたからこそ引き出されたものです。私たちにも多くの気付きがあります。

―教える側の姿勢も大事なのですね。

 島津 修学旅行が後になって、意味を持つ活動になるように、丁寧な事前学習で自分なりの問題意識を持たせてあげて、生徒の学習を尊重する姿勢を見せたいと思っています。
 生徒が修学旅行を自分たちのものにするには、現地ではぜひこれをやってほしいというねらいを伝えたうえで、興味関心を広げるとか、それを一段階深めるとか、対話することの大切さに気付くとか、何らかのフックにかかるように構成することを心掛けたい。「問いから問いへ」の学びとなる、優れた体験をさせてあげたいのです。

―あと2か月あまりで出発です。生徒に期待することは?

 今井 問いを持って取り組めば、楽しんでいるだけでも心に残ることはあると思います。その場で感じることを大事に温めていってほしいです。

 宇佐見 事前学習で楽しみ方が変わるのは、これまで生徒たちを見てきて分かっています。今回も当日は全力で楽しんでほしいです!

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