「NTTe-City Labo」での探究学習~多分野の実証フィールドで探究の問いを見つけ、育てる~
13面記事
NTTの本業である通信に特化した先進ネットワーク実証ラボでは、世界を変えていくような技術を実感
NTTグループは通信・デジタル技術を活用して地域循環社会の実現や地域課題解決に取り組んでいる。東京都調布市にあるNTTe-City Laboはその実証フィールドだ。敷地面積東京ドームおよそ2個分のNTT中央研修センター内にある展示コンテンツは延べ100ほど。探究学習の一環として、見学だけでなくワークショップや事後学習もセットで利用する学校が増えている。NTTe-City Laboはなぜ探究学習との親和性が高いのか、営業戦略推進部の小池侑生氏、渡邉亮氏にモデルコースを案内してもらい、NTT東日本が目指す探究教育支援についても話を伺った。
探究学習のための見学モデルコース
1.次世代施設園芸最先端の農業に驚き
360度カメラや遠隔操作ロボットを活用した「遠隔営農実証ハウス」で作っているのはトマト。天候に左右されず、通年で高糖度のトマトを目安(収量10ヘクタールあたり15トン)の2倍量収穫している。作業員が行う手作業は収穫と梱包などが中心で、勤務時間は企業と変わらない9~16時。汚れる作業もないと聞くと、生徒たちの関心にスイッチが入るそう。農家の高齢化や就農人口の減少など、日本の農業の課題解決に興味を広げる見学生徒もいるようだ。
2.トレーラーハウス
平時も災害時も使える長所をどう生かす?
NTTe-City Laboにあるトレーラーハウスは、災害時にライフラインが止まっても電気や飲用水を確保できる機能を備えている。屋根上の太陽光パネル、蓄電池、電気自動車との相互充放電や、大気中の水蒸気から水を作る装置など、一定期間生活に必要な機能を維持できる様子を展示。その環境の快適さに驚きつつ、NTT landscapeが運営するキャンプ場もあるという話から、社会課題解決にどう結び付けられるか、利用法に思いを巡らせる生徒もいるという。
3.超小型バイオガスプラント
資源循環が目の前で!

湿度・温度・二酸化炭素濃度を検知し、外気の取り入れや水やりなどは全自動の遠隔営農実証ハウス
NTT東日本の社員食堂などから出た食品廃棄物をメタン菌で発酵させ、バイオガスと液体肥料へと再資源化する「超小型バイオガスプラント」。生成されたバイオガスを発酵槽の保温に必要な熱エネルギーとして直接活用する仕組みが構築されており、資源が循環するプロセスを体感することができた。さらに、余剰となる熱エネルギーについては、バイオガス発電に転用することで電力としても活用可能である。「遠隔営農実証ハウスで育てた野菜の売れ残りや残りかすでもいい」と次なるイメージもふくらむ。
4.IOWN Lab×ローカル5G オープンラボ
高速通信が創造する未来を体感
先進ネットワーク実証ラボでは、まずNTTグループのIOWN構想に触れた。電気を使わない世界を光信号で実現するもので、電力効率は100倍に、データ容量は125倍にすることを目指しており、すでに遅延は200分の1を実現している。見学生徒は通常のインターネット回線経由のライブ映像と比べてその違いを体感できる。この展示では、遠隔地のロボットが何か物に触れると、手元のコントローラーに柔らかさや反発がリアルタイムで伝わる触覚伝送も体験可能だ。「オンライン診療でも、触診ができそう」などと、便利な未来を想像したくなる。
5.Digitalアート
名画に入り込む感覚。その価値を再発見

展示されている高精細複製画は所蔵元から公式に認定されており、原作品との見分けがつかないくらいの再現度
1メートル×1メートルあたり約20億画素という超高解像度で名画をデジタル化し、高精細に再現する「Digitalアート」。画材の質感、繊細な色味やタッチ、絵の具の厚みまでリアルに再現されている。拡大すると、細かいタッチまで見ることができ「美術部の活動で使用したい」の声も。「オンラインデジタル絵画は病院や高齢者施設にも喜ばれそう」と構想も広がる。
6.e-sports
ゲームにとどまらない可能性に触れる
近年では、eスポーツへの関心の高まりを背景に、全国の高校の1割以上にあたる567校がeスポーツ部を設置するなど、教育現場で普及が進んでいる。eスポーツのブースでは、ゲーム体験の前にeスポーツの社会課題解決の可能性を認識する。学生の交流や高齢者の認知症予防など健康的な街づくりから、eスポーツを通じて他者との関わりやデジタルスキルを学べる通信制サポート校の運営。高校のeスポーツ部の環境構築、指導者派遣などとNTTが手掛けるeスポーツ事業は広範で新鮮だ。eスポーツが教育や福祉ともつながっていたことに驚く。
7.ドローン
ドローンは賢く軽く、進化していた
ドローンとloTやAIの連携実証のコーナーでは、ドローンが、構造物のサビやヒビを検知し、それをモニターで見るというデモ飛行を体験する。ミリ単位でサビやヒビを検知し、修繕対象かどうか判断。サーマルカメラを備えたドローンもあると聞き、最近では生徒から「クマ被害対策に使えない?」などの声も上がったとのこと。
8.共創防災
空気から無限に水ができる!?

結露から作った「無限水」。蒸留や飽和水蒸気量の単元を思い出しながらその仕組みに興味関心を持つ生徒も
地域との共創防災ブースでは災害発生時から復興までタイムラインに沿ってさまざまなソリューションを紹介。スフィア基準に基づく災害時の1人あたりの居住スペースを見て、その狭さに避難所でのストレスを想像してしまう。大気中の水分を結露させて飲み水を作る機器「無限水」のほか、その場で水をろ過・循環させる手洗いスタンドや、シャワーなど、ストレス軽減に役立つ備蓄品は思いの外進化していた。水循環型のシャワーは、100リットルの貯水があれば約100名が10分間ずつ利用できるという。
9.遠隔営農コックピット
農業のイメージが変わる!

常にハウス内のデータがモニタリングされる遠隔営農指導者コックピット
ここでは、遠隔営農実証ハウス内を360度カメラで見ながら、遠隔営農の様子を見学。ハウス内のさまざまなデータがモニタリングされ、異常をすぐさま察知できることにも納得。カメラや作業者が装着するスマートグラスから送られる映像を見て指導員が栽培指導し、チャットでのやりとりも可能。「農業未経験者でもすぐに立派な農業者のように働ける」という意味がよくわかる。
探究学習を未来の自分につなげてほしい 小池侑生氏、渡邉亮氏インタビュー

NTT東日本株式会社営業戦略推進部の渡邉亮氏(左)、小池侑生氏(右)
―見学内容は農業、防災、アート、ドローン…と幅広いですね。
小池 当社はICTの力で社会課題を解決し、持続可能な循環型社会を実現すべく、2019年頃からは専業会社(次世代施設園芸のNTTアグリテクノロジーなど)を立ち上げて取り組んでいます。さまざまな挑戦を見ていただく場として2022年5月にオープンしたのがNTTe-City Laboで、これまでに4万2千名を超えるお客様にご来場いただいております。
―学校はどのように利用していますか?
渡邉 探究学習のカリキュラムとして、修学旅行のほか、校外学習でも使っていただくケースが多いです。見学のみ、見学とワークショップ、見学とワークショップに事後学習を組み合わせて活用される学校もあります。事後学習には、ワークショップの内容と連動したコンテンツで動画教材も用意しているので、学習内容の定着や理解に生かせます
―新しいテクノロジーに触れ、驚きの多い見学でした
渡邉 心を動かす体験が問いを生むと思っています。ワークショップは掘り下げたいテーマによって「問いづくりワークショップ」「ビジネス創造ワークショップ」など計6つの中から選択できます。今は「問いづくりワークショップ」を選ばれる学校が多いです。問いづくりワークショップでは、NTTe-City Laboでの体験・体感によって思い描いた理想の未来をブロック玩具で形にし、自身の興味関心を言語化。さらに、ディスカッションを通して問いを深めていきます。これが、探究のテーマづくりにとって大事なプロセスです。
―自分だけで問いを深めるのは難しいでしょうか?
渡邉 例えば、学校の調べ学習で「ドローンで人的作業を減らしたい」と考えても、「本当にできるかな」という疑問符がついてアイデアが止まってしまいます。NTTe-City Laboではドローンが農業の省力化や建物の劣化検知に使われている実証を見られるので、社会での活かし方まで考えることができます。
―自分と社会をつなげる第一歩ですね
小池 実証フィールドであるということがポイントです。体験して得た情報は強く心をつかみます。今後の学びや、就きたい仕事などキャリアデザインの発想にもつながったと、先生たちからも感想をいただいています。
―利用校はどのように探究学習を継続しているのでしょう。
渡邉 農業商業系の高校では、1年時にNTTe-City Laboで見た「無限水」をヒントに、「例えばジュースを出せないのか?」という問いを立てて探究を進め、課題研究発表会で、独自の震災時プロトタイプを発表した生徒がいたそう。ろ過してミネラルを加える「無限水」の実物を見たからこその発想です。
小池 先生が生徒と同じ目線で実証事例を見ることで、先生にも社会とつながる引き出しが増えることが奏功しているように思います。個々の生徒に合った学びを支援するような探究授業をつくりたいという先生たちに、NTTe-City Laboを活用していただきたいです。
渡邉 アントレプレナーシップ教育やキャリア教育の重要性が増しています。よりよい未来の人材を育成するため、今社会にはどんな課題があり、何が行われているか、どんな解決手段があるのかを体験しながら考える学びの場を、今後も提供していきたいと思います。

