高校改革 先導拠点の計画作り本格化
10面記事
静岡県の高校教育改革実行計画を議論する有識者委員会=9日、静岡市
文科省が進める高校改革の先導拠点づくりを巡り、各県が議論を加速させている。普通科改革では、理数系人材の裾野拡大や文理融合型の探究学習の充実を掲げた構想が打ち出されている。県外への人口流出や地域産業を支える人材の育成など、それぞれの地域課題を背景にした取り組みが目立つ。
普通科で文理融合教育
先導拠点事業は、文科省が2040年を見据えて策定した高校教育改革の基本方針に盛り込まれた。都道府県に実行計画の策定を促し、拠点校で得た成果を域内全体へ広げることを目指すとしている。
先導拠点は
(1)専門高校の機能強化
(2)普通科改革
(3)多様な学びの確保
―の3類型に沿って採択される。このうち普通科改革では、理数系人材の育成や、文理融合に取り組む教育課程や探究活動を進める。
5月中旬に公表された第2回の申請で採択された富山県と静岡県では、計画の具体化に向けて議論を本格化させている。
「高校教育改革と銘打っているが、教育という枠組みにとどまらない問題だ」
静岡県が6月9日に開いた高校改革の有識者会議。前澤綾子教育長は、高校改革を県全体の未来戦略として捉える必要性を強調した。
県内では生産年齢人口の減少や若者の首都圏流出が続く。会議では委員からも「高校の計画であるだけでなく、地域の未来づくりの計画だ」との意見が出た。
普通科改革の拠点となる沼津東高校では、文理の枠を超えた探究学習を進める。地域と協働した学びの拠点となる「サイエンス・イノベーション・コモンズ」を開設。高度な実験機器を備え、探究学習のための施設とする。
富山県は魚津高校を拠点に、理数系人材の裾野を広げる。3年次からの文理分けを前提に文理融合教育を進める他、全生徒が理数探究基礎を学ぶ。校内には探究棟を整備し、バイオ・環境ラボや探究ルームを設ける計画だ。
対象とするのは、一部の理数系トップ人材だけではない。製造業や医薬・バイオ、半導体関連産業など県の基幹産業と接点を持ちながら、多くの生徒が科学やデータ活用に関心を持つ環境づくりを進める。担当者は「理数系のトップ人材だけを育てるのではなく、多くの生徒が理数分野に関心を持てる環境をつくりたい」と話す。
背景には、急速な少子化と県立高校の魅力向上の課題がある。県内の中学卒業予定者は現在の約8500人から2040年には約5300人に減る見通しで、本年度の県立高校平均志願倍率も0・89倍まで下がった。県は高校再編を進める中で、拠点校での取り組みをきっかけに県立高校の特色化を進める狙いがある。
外部資源活用、先端科学を学ぶ
第3回の申請に申し込んだ各県の構想も公表されている。
大阪府は天王寺高校を拠点校として申請した。科学技術分野を牽引するトップサイエンス人材の育成を狙う。先端科学への深い理解に加え、文理横断的な視点やコミュニケーション力を備えた人材育成を掲げる。
天王寺高校は長年スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けるなど理数教育で実績を重ねてきた。近隣には大阪大学や産学連携拠点「中之島クロス」など世界水準の研究機関が集積しており、こうした外部資源を活用した高度な学びも構想する。成果を府内全体へ広げ、産業競争力の強化につなげたい考えだ。
熊本県は人吉高校を、データサイエンスを活用した理数系人材育成モデルの拠点として申請した。台湾積体電路製造(TSMC)の進出を背景とした半導体関連産業の拡大を踏まえた。農業や防災、医療など幅広い分野への応用も視野に入れる。
福井県は敦賀高校を候補校とした。理数探究基礎の充実やDXを活用した授業、学校設定科目「データサイエンス」の新設を計画する。SSH指定校以外で理数科を持つ強みを生かし、他地域への波及も見込む。
北海道は有朋高校を普通科改革と多様な学びの確保の両類型で申請した。通信制・定時制と遠隔授業配信センターを活用し、地理的条件を超えて理数教育を受けられる環境づくりを目指している。
安定的運営へ支援が不可欠
先導拠点の構想の実現に向けた課題は何か。
静岡県の有識者会議では、文理融合型の探究や社会と連携した学びを進める上で、専門的に指導・伴走できる人材の確保を課題に挙げる意見が出た。県教委の担当者は、拠点校の立ち上げ以上に運営を継続するための人的・財政的支援が重要だと指摘する。
富山県の担当者は、外部機関との連携を単発で終わらせず、継続的な仕組みにする必要性を指摘する。
各県は今後、高校教育改革の実行計画作りを進める中で、先導校で整える教育課程や外部連携の仕組みを地域全体にどう広げるかが問われる。

