日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

平和教育・主権者教育、法令・指導要領との関係は

NEWS

pick-up

 文科省が同志社国際高校の米軍基地移設に関する学習を教育基本法に反すると認定した。一部からは平和教育や主権者教育の萎縮を懸念する声があるが、教育関係法や学習指導要領ではどうなっているか。法令等の記述を整理した。

教育基本法と学校教育法
 教育基本法は1条で教育の目的を「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と定めている。2条では教育の目標を複数挙げる中に「主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う」、「国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」とある。14条2項では政治的中立のために特定の政党を支持・反対するための政治教育やその他の政治的活動を禁じているが、同法はむしろ、平和や主体的に社会へ参画する人材の育成を掲げている。
 学校教育法では21条で定める義務教育として行われる普通教育の目標に同様の記述がある。高校については51条で「義務教育として行われる普通教育の成果を発展拡充」させるとしている。

学習指導要領「社会科」
 教育課程編成の基準である学習指導要領もこの考えに基づく。
 現行の小(・中)学校社会科学習指導要領では、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して(、広い視野に立ち)、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎」の育成を目標の柱書に記している。高校公民科では「現代の諸課題を追究したり解決したりする活動」「国家及び社会の有為な形成者」となり、「基礎」がとられる。
 学習指導要領では柱書に加え、

 ・知識及び技能
 ・思考力・判断力・表現力等
 ・学びに向かう力、人間性等

 ―の三つの柱に沿った目標も提示。これに加えて、小学校では学年ごとに、中学校では地理・歴史・公民の分野ごとに柱書と三つの柱に関する目標を提示。高校では地理歴史科、公民科とそれぞれの科目ごとに示している。
 現行学習指導要領における「見方・考え方」は、学習指導要領解説によると、各教科ならではの物事をとらえる視点や考え方で、その教科を学ぶ本質的な意義の中核のこと。
 社会的な見方・考え方は、社会科・地理歴史科・公民科の特質に応じた見方・考え方の総称で「課題を追究したり解決したりする活動において、社会的事象の意味や意義、特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて構想したりする際の視点や方法(考え方)」としている。
 例えば、中学校社会科の公民的分野では「現代社会の見方・考え方」として、「社会的事象を、政治、法、経済などに関わる多様な視点(概念や理論など)に着目して捉え、よりよい社会の構築に向けて課題解決のための選択・判断に資する概念や理論などと関連付けること」と示している。

「多面的・多角的」がカギ
 思考力・判断力・表現力等について、社会科・地理歴史科・公民科のキーワードは「多面的・多角的」だ。小学校では、まずは立場を踏まえて考えることを重視して「多角的」とされているが、中学校・高校になると「多面的・多角的な考察」となる。
 中学校社会科、高校公共の解説によると、現代の社会的事象が多様な側面をもつとともに、それぞれが様々な条件や要因によって成り立ち、さらに事象相互が関連し合って絶えず変化しているため「多面的」に、社会的事象を捉えるに当たっては多様な角度やいろいろな立場に立って考えることが必要だとして「多角的」としている。
 例えば、高校で必履修科目の公共では、「現実社会の諸課題の解決に向けて、選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理を活用して、事実を基に多面的・多角的に考察し公正に判断したりする力や、合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養う」と記されている。
 学習指導要領の「内容の取扱いについての配慮事項」においては、(多面的・)多角的に児童(・生徒)が考えを深められるようにするための留意点も示している。恣意的な考察や判断に陥らないよう、多様な見解のある事柄や未確定な事柄を取り上げる際には特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を取り上げたりする偏った取り扱いをしないよう求めている。あくまで社会科・地理歴史・公民科の目標を実現できるようにすることが重要だ。
 中学校社会科・高校公民科の解説ではその点について、一つの見解が絶対的に正しく、他の見解は誤りであると断定するのは困難と指摘。政治においては議論を交わしながら合意形成を図ることが重要だとして、冷静で理性的な議論の過程の大切さを理解できるよう指導することが重要だとしている。
 資料についても出典や用途、作成経緯などを吟味した上で使用することも求めている。資料の例として中学校社会科では新聞記事、読み物、統計その他資料を、高校公民科ではこれに加えて、年鑑、白書、地図などを示している。

安全保障に関する学習
 学習指導要領では、社会科で安全保障や防衛、自衛隊についても取り上げることを明記している。
 小学校4学年での地域の関係機関や人々がこれまで自然災害に協力して対処してきたことや、様々な備えをしていることを扱う内容、6学年での日本国憲法や立法、行政、司法の役割を学ぶ際には、自衛隊の役割について触れるようにするとしている。
 中学校の公民的分野では、大項目「D 私たちと国際社会の諸課題」のうち、国旗・国歌の尊重や、領土・領海・領空(竹島や北方領土、尖閣諸島)、拉致問題などを扱う中項目「(1)世界平和と人類の福祉の増大」で身につけるようにする思考力・判断力・表現力等として「平和主義を基に我が国の安全と防衛、国際貢献を含む国際社会における我が国の役割について多面的・多角的に考察、構想し、表現すること」としている。
 内容の取扱いでは核兵器の脅威に触れながら「戦争を防止し、世界平和を確立するための熱意や協力の態度を育成するよう配慮すること」としている。解説では、自衛隊や日米安全保障条約にも触れることを求めている。
 高校公共では、大項目「B 自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たち」で安全保障と防衛について、国際法と関連させて扱うこととしている。解説では中学校と同様、自衛隊や日米安全保障条約について、広い視野に立って理解できるようにすることを求めている。
 日米安全保障条約については、少なくとも学習指導要領とその解説で「基地」について取り扱わないよう求める記述はなかった。扱う際には、他の学習内容と同様、多面的・多角的に考察できるよう、出典や用途、作成経緯などを吟味して資料を活用することなどが求められるのは変わらない。

総合的な探究の時間
 現行学習指導要領から高校で導入された総合的な探究の時間について、各学校でどのような生徒を育てたいか、どのような資質・能力を育成したいか定めるに当たり、各学校で定める目標と内容については「目標を実現するにふさわしい探究」「探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力」を示すとしている。従来から「学習対象」とされてきた「目標を実現するにふさわしい探究」については学習指導要領で小・中学校の総合的な学習の時間と同様、国際理解、情報、環境、福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題などを示している。
 総合的な探究の時間における体験活動について、特別活動との関連を意識して位置づけることもできる。ただその際、例えば修学旅行と関連させる場合について解説では、

 ・その土地に行かなければ解決できない学習課題を生徒自身が設定していること
 ・現地での学習活動計画を生徒が立てること
 ・インタビューや調査などの自主的な学習活動の保障
 ・事後に解決できた部分はまとめ、解決できなかった部分は別の手段で追究する

 ―などを配慮事項として示す。
 また、各教科等の目標や資質・能力と関連を図ることが重要。地理歴史科・公民科などと同様、解説には特定の立場や見方に偏った取扱いがされているような教材は適切でないと明記されている。

pick-up

連載