日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

改革先導拠点 専門高校、多様な学び構想は

10面記事

高校

北海道有朋高校内に設置された遠隔授業配信センター(T-base)によるオンライン授業=有朋高校より提供

 約3千億円の基金を活用する高校教育の改革先導拠点。三つの類型のうち、高度な技能を備えたエッセンシャルワーカーの育成(類型1)や、遠隔授業などによる多様な学びの機会の確保(類型3)では、各県の課題や特色がにじむ。6月下旬に公表された第3回の採択結果では半数以上が不採択となり、各県では追加公募への対応を視野に構想の見直しを進めている。

地域資源活用 産業高度化へつなぐ

 類型1では、地域産業を支える高度専門人材の育成に取り組む高校を支援する。農業、水産、工業などの専門教育を土台に、データや先端技術を取り入れ、地域資源の活用や産業の高度化につなげる構想が目立つ。
 山梨県立農林高校は、森林、農業、ワインを結び付けた地域ブランディング教育を進める。学校設定科目「ワイン学」を発展させ、農協や県酒造組合などと連携しながら、科学的根拠に基づく醸造や商品開発を学ぶ。
 長崎県立長崎鶴洋高校は、県内唯一の水産科設置校として、水産業や海洋産業の高付加価値化を担う人材を育てる。「海洋工学」や6次産業化実習を通じ、養殖から加工、商品化までを一体的に学ぶ。
 宮崎県立都城農業高校は、環境データを活用したスマート農業を取り入れる。生産、加工、販売、流通を一体で捉える分野横断型カリキュラムを整え、次世代地域農業を支える人材育成を目指す。
 先端技術を地域産業に生かす動きもある。岩手県立黒沢尻工業高校は、東北初となる「半導体工学科」を設置する。生産現場で使われる装置を活用した実習や、大学・企業の専門家による指導を通じ、未来の半導体関連産業を支える人材を育てる。
 和歌山県立和歌山工業高校は、高校3年間と専攻科2年間を接続した学びを整える。県の基幹産業の化学や鉄鋼分野で活躍する高度DX人材育成に向け、大学科目の先取り履修や統計データ活用も取り入れる。
 愛媛県立今治工業高校は、日本有数の海事都市・今治の海事産業を支えるため、造船コースを造船科へと発展させ、専攻科も設ける。全科共通の学校設定科目で船舶の構造や動力、エネルギーなどを学ぶ。

遠隔で授業配信 教育課程を柔軟化

 類型3では、多様な学習ニーズへの対応に取り組む高校を支援する。北海道有朋高校は、遠隔授業で理数系科目を小規模校に配信する。「イノベーター理科」や「イノベーター数学」などの科目を設け、大学教員や技術者から先端技術と結び付けた授業を送る。連携校の生徒が、学校の規模や所在地にかかわらず高度な理数教育を受けられる環境を整える。
 長期休業期間にはサイエンス・リテラシーやサイエンス・コミュニケーションなどのゼミをオンラインで開催。生徒が希望進路や関心に応じて参加できるようにする。
 石川県では、奥能登地域の5校共通の学校設定教科として「奥能登学」を新設する。里山や復興、防災、医療福祉などを学び、1年次に共通テーマを扱う。2年次以降は各校の地域資源を生かした講座を相互に履修する。
 遠隔授業の拠点となる「奥能登未来創造センター」(仮称)からは、5校へ単独開講の難しい科目や生徒の実態に応じた科目を配信する。少子化の影響で2040年には5校への入学者が100人未満に半減すると見込まれる中、奥能登地域の中学校からの進学率の改善を目指す。
 富山県立小杉高校は、総合学科の仕組みを生かし、教育課程を柔軟化して生徒が自主活動や地域活動に取り組む時間を確保する。不登校傾向や特別な支援を要する生徒に加え、今後増えるとみられる外国人生徒にも対応できる学習環境を整える。
 AIを使った個別学習や、大学生・教員OBらによる学習支援を取り入れる他、校内に地域連携や日本語指導の拠点を整備する。県の担当者は「個別最適な学びのニーズに対応できれば、生徒の可能性を伸ばせる」と話す。

地域と双方向の協働姿勢が鍵
岩本 悠 地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事

 先導拠点づくりと今後の実行計画策定のポイントは、従来の「学校改革」「教育政策」の視点に加え、各都道府県の未来を見据えた「人材育成」「地域政策」の視点で構想することだ。
 高校が困っていることに、産業界や大学、市町村などに協力してもらうという一方的な支援の発想を超え、産業界や大学、市町村などが抱える課題に、高校も協力するという双方向のパートナーシップの発想に立つことが重要になる。高校と地域の共通の利益となる目標を設定し、共に課題解決に取り組む協働・共創の姿勢が、採択の可否だけではなく取り組みの実効性、持続性、展開性の鍵を握る。
 高校教育を通じて地域の未来を創る本気度が問われている。

高校

連載