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小学生『夢をかなえる』作文コンクール 「学校賞」受賞校に聞く

7面記事

企画特集

課題図書「夢をかなえる」冊子版

 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」(主催=NPO法人日本FP協会/日本教育新聞社、後援=文部科学省他)は、子どもたちが将来への夢を描く大切さと、その実現に必要なライフプランニングの意義を学べる取り組みだ。課題図書を読み、「ライフプランシート」と作文を作成する流れで、キャリア教育と金融経済教育をつなぐ活動として注目されている。本特集では、第19回で優秀学校賞を受賞した3校の事例を紹介する。校外学習と調査から「自分はどうありたいか」を深く問う学校、校内発表で互いの夢を応援し合う学校、出張授業でお金の価値や将来のリスクを学ぶ学校など、各校の指導の工夫に迫る。

対話を通して10年後、20年後の自分を想像する
群馬県前橋市立荒牧小学校

 群馬大学共同教育学部に隣接し、教育実習生を多く受け入れるなど、日頃から授業研究に熱心な土壌を持つ前橋市立荒牧小学校(吉田晶子校長、児童数500)。第19回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」において85点もの作品を応募し「優秀学校賞」に輝いたほか、個人部門でも2名の児童が「優秀賞」を受賞した。6年生の担任として中心となって応募を進めた森村修一教諭に、コンクールを活用したキャリア教育の工夫や、自身の異色の経歴を生かした指導について話を聞いた。

森村教諭

「総合」に組み込み身近な職業調べから

 同校がコンクールに取り組んだのは、6年生2学期の「総合的な学習の時間」。学年で「自分の将来を考えよう」という単元の進め方を相談していた折、学校に届いたコンクールの案内資料を目にし、参加を決めた。
「いきなり夢を書かせるのではなく、まずは『働くってどんなこと?』というテーマで、2学期最初の頃の宿題として、家の人にインタビューをすることからスタートしました」と森村教諭は語る。身近な大人の職業や、仕事における苦労、やりがいを尋ねることで、児童が将来の仕事を考える入り口を作った。
 その後、インタビュー結果をグループで聞き合う時間を設けた。さまざまな大人の職業のやりがいに触れた後、朝学習の時間を利用してコンクールの課題図書『夢をかなえる』を電子書籍(Webbook)で読み、ICTを活用した職業の調べ学習へと展開していった。

応募後の校内発表会で互いの夢を応援

 調べ学習の後は、コンクール指定のライフプランシート「夢の設計図」の作成に取り掛かった。中には具体的な仕事が思い浮かばない児童もいたという。「そういう場合には、『あなたはこういうところが優れているから、それを生かせる職業を一緒に考えよう』と声をかけました。良い点を伝え合うキャッチボールができたことは大きかったですね」と振り返る。
 夢の設計図には、夢を持ったきっかけや、何歳で何をするかといった道筋を詳細に書き込む。森村教諭は「設計図がしっかり系統立てられて完成していれば、作文へはスムーズに移行できました」と、シート活用の有効性を指摘する。
 さらに同校では、作文を応募して終わりにはしなかった。「お互いの夢を応援し合える関係を作りたいと考え、応募後にICTツールで発表資料を作成し、クラスをまたいで将来の夢を発表し合う機会を設けました」。
 他者の夢を応援できる人が自身の夢も応援してもらえるという姿勢を学年全体で育んだ。

キャリア教育と金融経済教育の両面から

 個人賞の優秀賞に輝いたのは、熊川琴子さんと宮田茉佳さんだ。熊川さんは「小学校教諭」を夢に掲げ、大学での教員免許取得に加え、7日以上の介護体験が必要なことなどを調べ、自身のライフプランを描いた。
 一方、宮田さんは「漫画家」を目指し、画力の向上だけでなく、読者の立場に立つためのコミュニケーション能力や集中の持続力といったプロに必要な要素を的確に分析した。
 森村教諭は「2人とも、どのような進路に進み、どんなスキルを身に付ければいいのかを具体的にイメージできたことが最大の成果でした」と児童の成長を喜ぶ。
 コンクール参加のメリットについて、キャリア教育の視点からは「『夢の設計図』を書くことで、10年後、20年後、30年後と区切りをもって未来の姿を思い浮かべ、今の自分に補うべきスキルを考えられたこと」を挙げる。
 また、金融経済教育の視点に付いても「生活していくため、あるいはスキルを身に付けるためにはお金が必要であり、自活しなければならないということに児童が気付き、真剣に考え始めるきっかけになりました」と評価する。

自身の挫折経験を語る「夢は一つだけではない」

 実は森村教諭自身、異色の経歴の持ち主だ。若い頃は俳優志望で、スタントマンとして特撮番組やショーに出演していた。しかし、けがにより志半ばで断念。無職の期間を経て、教員免許を取得し教職に就いた。
 授業では、そうした自身の紆余曲折を包み隠さず児童に語った。「仕事がなくなり、不安だった時代のリアルな話をすると、子どもたちもハッとしたようでした。夢が変わっていった私の人生を例に挙げ、『夢は一つではなく、違う道が新たに見つかったら、そちらに進んでいいんだよ』と伝えました。それによって、夢を語ることへのプレッシャーが下がった児童もいたと思います」と語る。
 自身の人生経験を糧に児童と向き合う森村教諭の姿勢は、子どもたちの「夢の設計」に現実味を与えている。
 「子どもたちと一緒に、どんな夢を目指すのか、その道筋をたどる時間はとても楽しかったです。教員になるのが遅かった分、まだ学ぶべきことは多くあります。教師になるという夢は、かなえて終わりではなく、努力を続ける始まりでもあります」。

キャリアとお金の学びを接続し「夢をかなえる」力を育む
千葉県柏市立田中北小学校

 第19回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」において、123点もの作品を応募し、優秀学校賞に輝いた柏市立田中北小学校(渡邊直美校長、児童数1352)。同校で活動を主導した藤川雅文教諭は証券会社勤務を経て教員となり、日本FP協会認定の「AFP」資格を持つ。

藤川教諭

キャリア教育と結びつけ「総合」で実践

 藤川教諭は以前からキャリア教育と金融経済教育を組み合わせた活動ができないかと模索していた。今回、5年生後期の「総合的な学習の時間」でコンクールを活用して実践を試みた。
 指導は3段階で構成した。第一に課題図書『夢をかなえる』を読み「何になりたいか」を考える。第二に職業体験施設での校外学習。第三に「自分はどうありたいか」を考える流れだ。「どうありたいか」を問うことで、単なる職業選択ではなく、子どもたち自身がどのような生き方をしたいのかを深く考えさせることをねらった。
 指導にあたり、藤川教諭は日本FP協会が提供する資料を教材として積極的に活用した。子どもにも理解しやすく構成されており、公平性や中立性も保てる。さらに、過去の受賞作文を児童に提示し、「キャリアを考え、さらにお金のことまで考えるとはどういうものか」を具体的にイメージさせる工夫を凝らした。

「体験」と「調査」の組み合わせ

 段階的な学習と体験を通じ、児童は職業への理解を深め、具体的な自分の将来像を描き始めた。
 「大人から見れば業種は多様ですが、子どもは身近な職業しか知りません。体験施設を使ったり、図書で調べたりすることが大事です」と藤川教諭は指摘する。
その一例が、個人賞「優秀賞」を受賞した古屋志穂さん(当時5年生)の作文「幼い頃からの愛と馴染み」だ。幼少期から本が好きで小説家を志している古屋さんは、授業を通じて、小説家になるための4つのルートや、語彙力や構成力などの能力が必要であることを調べ上げた。
 作文では「夢をかなえるのは簡単ではない」としつつも、「努力は無駄ではない。どんなに苦しくても小説家になってみせる」と熱い決意をつづった。
 受賞後、古屋さんは作文を完成させるまでの過程を振り返り、「調べると簡単な職業ではなく、大きな苦労を重ねて頑張り抜ける人しかなれないと知り不安になった。しかし幼い頃からの(本への)愛と馴染みが後押ししてくれた」と語る。
 藤川教諭は「本が『好き』という気持ちが、具体的な夢へ向かう一つのステップとなり、より具現化されたのではないか」と、手応えを得ている。

実感を伴う学びのコツ

 本コンクールの利点について藤川教諭は、教科書だけでは十分に扱いきれないキャリア教育や金融経済教育の分野で、外部の知見を取り入れられる点を挙げる。「小学生にはお金だけの指導では実感が伴いにくく、指導のハードルも高いのが現状です。キャリア教育と並行して取り組める点に可能性を感じました」と指摘する。
 将来の夢や就きたい職業について調べ、そのために必要な資金やライフプランを考えるプロセスを経ることで、児童はお金と自分の人生の関わりを実感できるようになる。「将来必要となる行動を見通し、逆算して考える力が身に付くのではないでしょうか」と藤川教諭は語る。
 本コンクールを活用することで、キャリア教育と金融経済教育を同時に進める実践が可能になった。藤川教諭は「今後も、両者をつなぐ『架け橋』となるような実践を続けていきたい」と語る。

金融経済教育で広がる「未来の自分」
和歌山県智辯学園和歌山小学校

学習発表会の様子

作文コンクールを活用し夢の具現化

 和歌山県の私立智辯学園和歌山小学校(藤田清司理事長、児童数384)では、6年生が総合的な学習の時間において、「自分の将来の夢について考える」キャリア教育に1年間取り組んだ。
 その中で活用したのが、「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」である。児童が具体的に将来像を描けるようにと導入したもので、昨年度は73点の作品を応募し、学校賞「優秀学校賞」を受賞した。
 授業では、似た夢を持つ児童同士でグループを編成し、目指す職業についての調べ学習を実施した。該当する職業に就いている身近な人へのインタビューも行い、理解を深めた。学習の成果はグループごとに壁新聞としてまとめ、2月の学習発表会で発表した。

「目標に向かって努力する態度」の育成に

 小学校のキャリア教育の重要な目標の一つに、「目標に向かって努力する態度」の育成がある。作文作成にあたっては、児童は課題図書『夢をかなえる』を読んだ後、「ライフプランシート」を作成した。このシートは、将来の目標や進路を具体的に描く「夢の設計図」であり、どの時期にどのような力を身に付けるかを記入することで、その育成につなげた。
 同校では、ライフプランシート作成の指導に日本FP協会による「ライフプランニング出張授業」を活用した。ファイナンシャル・プランナーが来校し、ライフプランニングの重要性を児童にわかりやすく伝える授業だ。キャリア教育に加え、金融経済教育の一環としても活用できることから、全国で広く実施されている。

出張授業が支える金融経済教育の効果

 将来に必要なお金の見通しを立てる経験は、自立する力の育成につながる。また、近年増加している若者を狙った金融トラブルへの対策として、適切な判断力や警戒心を養うことにも役立つ。
 出張授業後、児童は自分の夢を実現するために必要な行動や時期をより具体的に考え、それを作文に反映させることができた。
 指導にあたった西田佳苗教諭は、この出張授業について、コンクール応募支援と金融経済教育の両面で効果があったと評価する。
 「AIの発達やキャッシュレス化が進む現代では、子どもたちがお金の価値を実感しにくくなっているのではないでしょうか。金融経済教育を通して、将来のリスクを適切に考えられる力を身に付けてほしいと考えています。本校が掲げる『未来を担うリーダーの育成』という観点からも、この授業は必要な力を育む一助となりました」と語る。

特設サイトと出張授業でコンクール応募校をサポート

『夢をかなえる!キッズライフプランパーク』画面

 日本FP協会は、「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」の取り組みを支援するため、児童が自発的に学べるウェブコンテンツや、学校向けの出張授業を展開している。
 「キッズライフプランパーク」は、将来の夢について楽しく考えられる金融経済教育用の特設サイトだ。パーク内のアトラクションを巡る感覚で学習を進め、「夢の設計図」を完成させる。完成したものはそのままコンクール応募用の「ライフプランシート」として活用できる仕組みだ。学校や家庭学習でも使いやすく、教員向けには低・高学年別の学習指導案も用意されている。課題図書『夢をかなえる』の電子ブック版も公開中。“1人1台端末”で学ぶことができるため、ダウンロードしての活用が増えてきている。
 より実践的な学びの場として、日本FP協会では、お金の専門家であるFP(ファイナンシャル・プランナー)を小学校に派遣する「ライフプランニング出張授業」も提供している(先着10校限定)。講義のほか、実際にライフプランシートを作成するアクティブラーニングを取り入れている点が特徴だ。作成したシートはキャリアパスポートの一部として活用できるほか、「2分の1成人式」や卒業文集制作などに導入する学校も多い。
 対象は小学1〜6年生で、5月〜9月下旬に実施。交通費を含め学校側の費用負担はなく、各校の要望に沿った柔軟な授業プランの作成にも対応する。受付は授業希望日の2カ月前まで。

 『夢をかなえる!キッズライフプランパーク』
 https://www-oc.jafp.or.jp/personal_finance/lifeplanpark/

 ライフプランニング出張授業
 https://www.jafp.or.jp/personal_finance/yume/inst_disp/

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