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教育課程柔軟化 多様な学びが可能に

10面記事

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「SS健康科学」の体験実習。山形県立保健医療大学での講座を受講する東桜学館高校の生徒たち

 高校の次期学習指導要領に向け、教育課程を柔軟化する方向性が示されている。卒業に必要な学習量は維持しながら、単位を細かく認定し、科目の統合や学校外の学びを教育課程に組み込みやすくする。先導校では、何が変わり始めているのか。

生まれた「余白」で主体的学習

 単位制の柔軟化を巡って文科省は、卒業に必要な単位数(現行74単位)を148単位に細分化し、週1コマの授業を半期で1単位に認定できるようにする方針だ。各科目の単位数を増減しやすくする他、複数科目を組み合わせた科目も認める。理科の4分野を統合した「理科基礎」など、生徒の実態に合った科目の開設を促す。
 教育課程に生まれた「余白」は、生徒の主体的な学びの時間に充てることを想定している。学外でのボランティア活動やインターンシップ、大学での講義の受講などを単位として柔軟に認定しやすくし、学校外の学びを教育課程に位置付けやすくする。

科目統合し探究活動
 科目統合を先行して進めてきたのが、山形県立東桜学館高校だ。既存の教科・科目を組み合わせた学校設定教科「SS」を設け、科目統合による教育課程づくりに取り組んでいる。開校2年目からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、文系・理系を問わず科学的リテラシーを育てることを重視してきた。探究活動を支える土台として設けたのが、理科や保健、家庭などを組み合わせた「SS」だ。
 1年次必修の「SS自然科学基礎Ⅰ」(4単位)は、物理基礎と生物基礎を中心に、地学や化学の内容も関連付けて学ぶ。2年次以降は、文系生徒が「SS自然科学基礎Ⅱ・Ⅲ」で理科4分野を幅広く学び、理系生徒は「SS化学」や「SS物理」「SS地学」で各分野の理解を深める。
 1年次必修の「SS健康科学」(2単位)は、「保健」と「家庭基礎」を組み合わせた科目だ。山形県の健康・医療課題を、食育や疾病予防の視点から扱う。大学教授による講話や実習も取り入れ、学習内容を地域の実情と結び付けている。
 地域課題と結び付けた学びは、生徒の探究テーマにも表れている。地域の健康課題や食品ロスを扱う生徒が増え、使われずに廃棄される野菜の活用法などに着目した研究も出てきた。
 ただ、科目統合を教育課程に位置付ける難しさもある。今後は学校設定教科ではなく、従来の教科の枠内でも実践できる形への見直しを進める。生島信行校長は「教科融合による柔軟な教育課程の設計は現場では想像以上に難しい」としつつ、「『SS健康科学』のように学校目標の実現に欠かせない教科・科目は、困難があっても継続していきたい」と話している。

履修科目は生徒が決め
 単位認定や履修時期を柔軟にしたのが横浜創英高校(横浜市)だ。現行制度の範囲で、令和7年度入学生から新たな教育課程を始めた。生徒が自分の学びを自分で設計する力を育てるため、3学期制を2学期制に改め、半期ごとの単位認定を取り入れた。
 卒業に必要な74単位分の履修科目は、進路希望や関心に応じて、生徒が自分で組み立てる。同校が必履修科目と認定している34単位の多くを1年次前期に置き、1年次後期から自由選択科目を増やす。1単位は週2コマ、2単位は週4コマの授業を半期で行い、3単位以上の科目は通年や学年をまたいで履修する形にした。
 自由選択科目では、クラスやコースを超えて授業を編成する。数学Ⅱでは本年度後期から、異なる学年の生徒が同じ授業を受ける形も始める予定だ。社会に出れば年齢や経験の異なる人と協働する。同校では、授業でも学年ごとの枠を緩めることで、学校の学びを社会に近づける狙いがある。
 授業のないコマを「自律の時間」と位置付ける。生徒によって週3~4コマほどある。6月下旬に校内を歩くと、図書館で自習する生徒や、翌日に控えた体育祭の準備を進める生徒の姿があった。横山卓哉主幹教諭は「余白を生むこと自体が目的ではない。その時間にどんな意味を持たせるかを、生徒が考えられるようにすることが大切だ」と言う。
 一方で、柔軟な教育課程は運用の負担も大きい。選択科目が増えると、生徒の時間割は一人一人異なる。同校では来年度の時間割を組むため、9月ごろから翌年3月ごろまで、科目の組み合わせや教員の持ち時間、教室の配置を調整する。生徒や保護者にとっても全体像をつかみにくくなるため、1年生には履修や科目選択の考え方を説明する動画を配信し、三者面談でも確認する。入学直後から、進路に応じた科目選択の考え方を伝えている。
 長期欠席の生徒への対応も課題となる。1年次前期に必履修科目を多く置くため、入学直後に欠席が続くと、その後の履修に影響しやすい。同校では教務部と生徒支援の担当者らが欠席状況を共有し、一人一人の事情に応じて履修や修得の方法を検討している。横山主幹教諭は「柔軟化の目的を教員間で共有し、科目選択の説明や長期欠席者への支援まで一体で設計する必要がある。それには教員の余白が不可欠だ」と指摘する。

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