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学校施設の水害対策を強化する~激甚化する豪雨災害に備え、教育継続と地域防災拠点機能を守る~

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昇降口に止水板を設置して浸水被害を防ぐ

 線状降水帯の発生や台風の大型化などにより、学校施設が浸水被害を受ける事例が全国で相次いでいる。このため、被害を受けてから復旧するのではなく、各学校ではハザード情報に基づくリスク把握や施設整備、防災DXの活用、教育継続計画(BCP)の策定など、平時からの備えによって被害を最小限に抑え、教育活動と避難所機能を維持することが求められている。

 近年、豪雨災害が頻発化・激甚化している。令和2年7月豪雨では熊本県を中心に多くの学校施設が浸水被害を受け、校舎や体育館が使用不能となった。また、令和6年能登半島地震からの復旧途上にあった石川県では、同年9月の豪雨によって再び河川の氾濫や土砂災害が発生し、学校施設や通学路にも被害が及んだ。近年の災害は、地震や豪雨など複数の災害が重なる「複合災害」の様相を見せており、学校施設には従来以上に高いレジリエンスが必要になっている。
 したがって、被災後の復旧を前提とするのではなく、被害を最小限に抑え、教育活動を継続できる体制を平時から構築していかなければならない。それゆえ、文科省の「学校施設の水害対策ガイドライン」では、学校ごとの浸水リスクを把握した上で、ハード対策とソフト対策を一体的に進めることを求めている。

ハザード情報を基に施設の脆弱性を把握する

 水害対策の第一歩は、自校の危険性を正確に知ることだ。洪水ハザードマップや内水浸水想定区域図、土砂災害警戒区域などを確認し、想定浸水深や浸水継続時間を把握することが重要である。加えて、受変電設備、給食調理室、備蓄倉庫、校務用サーバーなどの位置を確認し、浸水した場合にどの機能が失われるかを整理する必要がある。
 そこで近年では、施設台帳やBIMデータ(建物の3Dモデルに設計・施工・維持管理に必要な情報を統合したデジタルデータ)などを活用し、設備配置や浸水リスクを可視化する自治体も増えている。限られた予算の中で効果的に対策を進めるためには、被害の大きさや復旧への影響を踏まえ、優先順位を設定しながら計画的に整備を進めていくことが大切になるからだ。

学校機能を守るハード対策

 施設面では、浸水を防ぐ対策と、浸水しても機能を維持する対策を組み合わせることが求められる。出入口への止水板の設置や逆流防止弁の整備、校地内排水設備の改善は、浸水被害を軽減するための基本的な対策といえる。特に重要なのが、受変電設備や非常用発電機の保全だ。これらが浸水すると停電によって照明や通信機器、給排水設備が使用できなくなり、避難所機能も失われてしまう。そのため、設備のかさ上げや上階への移設、高基礎化などを進めることが望ましい。
 また、食料や飲料水、簡易トイレなどを保管する備蓄倉庫についても、高床化や上階配置を行うことで災害時の機能維持につながる。職員室や放送室、サーバー室など学校運営の中枢機能についても、浸水リスクを考慮した配置の見直しを行いたい。

防災DXによる迅速な判断と情報共有

 学校防災においてはデジタル技術の活用も重要性を増している。気象庁が提供する線状降水帯予測情報や「キキクル(危険度分布)」を活用することで、大雨による危険性を早期に把握できるようになった。学校では、これらの情報を基に臨時休校や下校時刻の変更、部活動の中止などを迅速に判断していきたい。
 保護者との連絡手段としても、一斉メール配信システムや学校連絡アプリの活用が進んでいる。災害発生時に電話回線が混雑しても、クラウド型システムを通じて情報共有が可能となるため、安否確認や登下校に関する連絡を迅速に行うことができる。
 また、防災アプリや河川水位情報、ライブカメラ映像などを活用し、教職員がリアルタイムで状況を把握できる体制づくりも重要になる。自治体によっては、学校と防災担当部局が情報共有システムを連携させ、避難所開設や施設被害状況を一元管理する取り組みも始まっている。

タイムラインと教育継続計画(BCP)の整備

 豪雨災害への備えとして重要なのが、災害発生前から復旧までを見据えた行動計画だ。文科省は、学校ごとのタイムライン(防災行動計画)の作成を推奨している。警戒レベルに応じて、「排水溝の点検」「備蓄品の上階移動」「臨時休校の判断」「避難所開設準備」などの行動を時系列で整理しておくことで、災害時の混乱を防ぐことができる。
 また、近年注目されているのが、教育継続計画(BCP)の整備だ。浸水被害によって校舎が使用できなくなった場合でも、近隣校との施設共同利用やオンライン授業の実施、仮設校舎の活用などによって学びを止めない体制を整えておくことが求められている。
 GIGAスクール構想によって一人一台端末やクラウド環境が整備された現在では、被災時でも学習データを保持し、遠隔授業を実施できる環境が整いつつある。校務支援システムのクラウド化や重要データのバックアップなど、ICT基盤を含めたBCPの構築が重要になっている。

「災害に強い学校」が地域の未来を支える

 学校施設は教育施設だけでなく、災害時には地域住民の命を守り、復旧・復興を支える拠点となる。災害が常態化しつつある今、学校には「被災しない施設」ではなく、「被災しても機能を失わない施設」が求められている。ハザード情報に基づくリスク把握、止水板や設備かさ上げなどのハード対策、防災DXの活用、そして教育継続計画(BCP)の整備を総合的に進めることが、子どもたちの学びと地域社会の安全を守ることにつながる。
 8月13日に発生した千葉豪雨しかり、気候変動時代における学校施設の水害対策は、防災対策にとどまらず、教育の継続性と地域のレジリエンスを高める未来への投資である。学校設置者、教育委員会、学校、地域が一体となり、「災害に強い学校づくり」を推進していくことが求められている。

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