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コロナ時代に考えたい学校問題【第52回】

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昆虫の命

 蚊に刺されると、痛いし、かゆいために、見つけたら叩いて殺すようにしていた。その憎い蚊を殺さない妻には驚いた。
 数年前に両親を見送ったとき、殺生が出来ない自分が居たことを思い出す。命あるものを慈しむ心情が急に芽生えたのである。不思議だった。

 子どもの頃、夏には網と虫かごを持って昆虫を探し、夏休みの宿題として標本にして学校へ持参した。生きているセミやトンボに注射をして、羽や手足をピンセットで伸ばして作ったものだ。
 最近、こうした標本を見ることはめったにない。理科では生きたカエルの解剖や鮒の解剖も姿を消している。動いている心臓を見ながら、生きている事を観察した。それを残酷とする風潮が保護者にはあったからなのか、はたまた団体からの圧力か、教科書からも削除されている。ならば日々大量に廃棄される肉や野菜の命への感覚麻痺と形骸化を強く指摘したい。

 この時期、ある映画を思い出す。菅原浩志監督による「ほたるの星」である。新米教師が蛍の飼育をしながら子どもたちと成長していく感動の実話ドラマである。校長役で樹木希林さんが出ている。青年教師の思いを受けて身を呈して行動する姿に共感した。ノンフィクションのシナリオに感動したそうで、友情出演だったと監督から聴かされた。
 この映画には、蛍の餌になるカワニナの命を扱う場面がある。母を亡くした子どもの何気ない問いに新米教師はどう対応したか。是非ご覧頂きたい。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題