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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第27回】

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「やりたい学び」の好機に

 休みだから出来ることがある。学級担任の頃によくやった事がある。当時は異例だった。
 私の声で本を読んだカセットテープに録音して生徒に回した。親には親育を楽しもうというテーマで普段考えていることやアドラーの心理学を解説しながら、これもカセットテープに入れて回した。これはかなりの効果があった。
 休み明けにその反応が様々に出た。「先生の読み聞かせが独り占めできた感じで嬉しかった」「先生の思いや考えがゆっくり聴けたので安心した」などの感想が寄せられ、同窓会では今でも話題になる。

 現代なら動画配信なのかもしれない。手段は変わっても思いは伝わるし、工夫は無限である。
 私ならこうした時期だからこそ、おもいっきり普段の学びを使って自由研究や自由工作などに取り組ませたい。登校の時に発表会を企画するだろう。それぞれの環境の中で、やりたいことをやれるように個々に追い風を送ってはどうだろうか。

 長野県伊那市立伊那小学校(※)の公開授業を参観した衝撃から、毎年6年生には1ヶ月かけて卒業論文や卒業制作を取り組ませた事があった。
 フランス革命を徹底的にまとめたTは報道の仕事に着き、郷里の武将・武田信玄をまとめたIは、山梨県庁職員になっている。また、ドレスを製作したYはデザイナーになっている。かなりの割合でその道へと進んでいることに数十年経って驚いている。
 こうした「やりたい学び」に取り組ませた時、学年の同一歩調を強いず、クラスそれぞれに取り組ませてくれた校長が居たことを今更ながら感謝している。この校長との出逢いが今の自分をつくっている事は間違いない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

 ※伊那小学校は全国に先駆けて総合学習を導入したり、通知表を廃止したりして注目を集めてきた。(編集局)