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私学流 特別支援教育

16面記事

書評

面倒見の良さ、丁寧さに特別支援の魂を込める
高橋 あつ子 編著
子の困難に向き合い体制整備

 特別支援教育の取り組みは例えば、公立が中・高校ともほぼ100%近く整備されている校内委員会が私立の場合、中49・0%、高50・6%、特別支援教育コーディネーターもほぼ同様で中43・6%、高45・9%と半数程度にとどまる(文科省・平成29年度特別支援教育体制整備状況調査)。進展しない理由はさまざまあるだろう。
 本書は、こうした現状の中で、目の前の生徒の困難さに向き合った時、特別支援教育を取り入れたケースや校内体制を整備した私学の取り組みを紹介した。
 落ち着きのない生徒、提出物は出さず、成績の振るわない生徒、感情のコントロールが難しい生徒など、特別支援の視点から捉えた時に対処の仕方が明確になる生徒がいる。学力は高いが、コミュニケーションに難のある「博士タイプ」の生徒への対応も、特別支援を要する。
 こうした生徒への対応とともに、なかなか体制整備が進まない私立での体制づくりから、非常勤講師を含めた共通理解の必要性、私立の生徒も受け入れる教育相談センター、適応指導教室の少なさ、高校生の受け入れ先など、特別支援教育の課題が見えてくる。
 その一方で、異動の少なさ、中高一貫などは体制を維持・継続しやすく、卒業後もケアできる条件がそろうなど、私立学校での特別支援教育の可能性も感じさせてくれる。
(1944円 学事出版)
(吹)

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