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学校や地域の実情を踏まえた「学校防災マニュアル」作成の進め方

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備蓄の保管場所にも注意が必要

いつ災害が起きても対処できる体制づくりを
 先月末、政府の地震調査委員会は、東北から関東地方の日本海溝沿いの海域では、今後30年以内にM7~8クラスの大規模な地震が起きる確率を最大で90%程度あることを発表した。
 2011年の東日本大震災後も数年ごとに大きな地震が起きているように、いつどこで未曾有の災害が起きても不思議ではない日本において、地域の防災拠点となる学校の役割は極めて重要なものとなる。それだけに、各学校にはいざというときに児童生徒の安全を確保する適切な対応が行われるよう、学校や地域の実情を踏まえた「学校防災マニュアル」を作成しておくことが求められている。
 「学校防災マニュアル」の目的は、学校における災害発生時の対応について教職員の役割を明確にし、防災体制を確立することと地域全体で地震等に対する意識を高め、体制整備の推進を図ることにある。その上で、(1)安全な環境を整備し、災害の発生を未然に防ぐための事前の危機管理。(2)災害の発生時に適切に対処し、被害を最小限に抑えるための危機管理。(3)授業再開や事後の危機管理という3段階を踏まえて作成する必要がある。なかでも事前の危機管理の有無は、発生時から事後の危機管理にも支障を来すため、最も重要な部分になる。

自然環境を把握し、学校独自の視点で
 もう1つ「学校防災マニュアル」の作成には、家庭、地域、自治体等の関係機関と共同で作業することが求められる。なぜなら、大規模災害時は学校だけで児童生徒の安全を確保することが難しいことや、避難所として地域のライフラインを担う学校も多いからだ。したがって、あらかじめ地域住民や自治体が支援できる内容について協議し、連携体制を確立しておくことが大切になる。また、学生に災害への意識を高めるため、マニュアルの作成に関わってもらうことも有効な方法である。
 内容については、学校が立地している自然環境をハザードマップや地域の歴史といった多角面の情報から把握し、学校独自の視点を取り入れることが重要になる。加えて、津波、火災、液状化、建物の倒壊、原子力災害など想定される「二次災害」についても、きちんと対策を立てておくことも重要だ。
 また、備蓄についてはどんな物資が必要かをリストアップすると同時に「どこに保管するか」を考えることが大切になる。特に津波や土砂災害、水害の被害が想定される地域では、1階の職員室や保健室などに備蓄したものは使えなくなると考えて対策する必要がある。

訓練で課題を明確化し、実践的なマニュアルに
 その上で、これらを踏まえて作成したマニュアルに基づいた訓練を繰り返すことで、課題を明確にすることが大事なステップになる。東日本大震災では、事前にマニュアルに沿った避難訓練をしていた学校が、そのデータをもとに避難方法を判断したことで津波から逃れた例があった。こうした実証や地域の交通事情の変化などを随時取り入れ、改善・改良を図っていくことが実践的なマニュアルにつながるのだ。
 なお、災害発生時に自分の身を守る行動をするため、実践的な態度や能力を養う児童生徒を対象にした避難訓練には、休憩時間中や清掃中、さらに登下校中など災害の発生時間や場所に変化を持たせ、いかなる場合にも安全に対処する工夫が望まれるところだ。

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