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教育と法の狭間で 法的アドバイスをもとにした実際の生徒指導事例60

12面記事

書評

梅澤 秀監・黒岩 哲彦 著
法を踏まえ現場に即した対応考える

 現在、東京女子体育大学の教壇に立つ梅澤氏は、昨年春まで高校教諭を務める傍ら、生徒指導や特別活動の研究を行ってきた。もう一人の著者の黒岩氏は、梅澤氏の長年の知友で、少年事件や校則問題に取り組んできたベテラン弁護士。
 前者が学校で起こり得る事例を挙げ、後者が法的アドバイスで応じる。それが本書の基本的な構成だが、さらに梅澤氏が現場と法の“狭間”に立ち、実際的な考え方を提示する。このサンドイッチ構造が類書と一線を画す特徴だ。
 例えば、生徒に罰当番として掃除をやらせたところ、保護者から「罰当番は体罰です」というクレームがきた事例。あるいは、授業中に騒ぐ生徒を廊下に立たせたところ、やはり保護者が「学習権を奪われた」と訴えてきた事例。この2例について「体罰」と「懲戒」の法的解釈を提示しつつ、現場の教師はどう指導すべきだったのか、そして事後どう対応すべきなのかを、生身の人間関係の中で考えさせる。
 全60の事例は、教育雑誌「月刊生徒指導」で9年間連載してきた100の事例から選び抜いたもの。校則・生徒心得、懲戒・体罰、生徒の問題行動、いじめ・ネットトラブル、政治的・宗教的活動など七つの章にくくられ、熱中症や著作権など今日的なテーマも網羅される。主に中・高校の教職員の勉強会や校内研修会に有効な一書だが、見開き単位でテーマが展開し、全編平易な文章で貫かれているため、広く学校問題に関心の高い諸氏にお薦めしたい。
(2200円 学事出版)
(由)

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