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一刀両断 実践者の視点から【第27回】

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論説・コラム

経済手法と人財育成

 またやらかしている。
 《「YESが0の人は『人罪』」小学校だよりが物議/書いた校長「7つの大事なことを伝えただけ」》(J-CASTニュース)という見出しの報道がある。研修で受けた内容を学校だよりに掲載したようだが、その軽率さはしばらく指摘される事になるのは容易に想定できる。自分はよいと思っても伝える相手にとっては違和感をもたれる内容だからである。
 報道によると、この学校だよりは、社員教育用のポスターに記されている内容を参考にしたようである。とかく経済分野の効率主義や人事管理のノウハウが優れているように感じて、学校現場に安易に持ち込む傾向が今も続いている。本来は逆で、人づくりや人の育成は、学校が本職であるはずではないだろうか。それがいつの間にか次々と経済手法が入ってくるようになった。文科省も行政も学校現場の実情を知らずに、効率主義や成果主義を導入して、さらに仕事を増やしている。
 私は校長定年後、就労支援の店を経営し、全国の企業経営者の集まりで毎週のように講話を頼まれ、行っている。多い時は千人を越える社長にも講話をしている。医師会や開業医の会でも講話をしている。本来、人の育成は私ども教師が本家であるはずである。年末には「辞めない社員の育て方」と題した本が出版される予定である。そのほとんどが教師としてやって来たことがベースになっている。
 教育のフィルターにかかると、人の行動や心理や価値観や人生までも、すべてが浮き掘りになる。人の話を懐に落とし、噛み砕かないで伝えることはこうした結果になりやすいものだ。自戒したい。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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