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個別最適な学びと協働的な学び

18面記事

書評

奈須 正裕 著
先進的実践介し教師の専門性探る

 「全員鉛筆を置いて。みんなで考える時間です」。これまで授業の中で発していた自分の声がオーバーラップして耳が痛い。あの子が題材を自分に引き寄せて考え始めていたのに…。「ごめんね」という気持ちはあったものの、一斉授業の呪縛から逃れられなかった自分を再発見させられる。
 本書は、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」がどのように実現可能なのかを、山形県天童市立天童中部小学校の「自学・自習」「マイプラン学習」「フリースタイルプロジェクト」で子どもたちが生き生きと学び育つ姿を通して教えてくれる。それらの学習は、子どもは有能な学び手であり、多様性からこそ学びは深まるという確固たる「理解」と「覚悟」の下に展開されている。同校の教師は、その専門職として一人一人の子どもを十分に把握し柔らかなまなざしを持ち、子どもの無自覚な学びを、より深い自覚的な学びへと、タイムリーに切り込む問い掛けを行っているのであろう。
 教師はなぜ今、学びを変えていかなければならないのか。それは、このコロナ禍を越えて持続可能な世界を創る次世代が、自分の考えを持ち、他者と協議し判断した中で新しい価値を創造できるよう育てる責任があるからだ。それが教師や学校の存在意義である。今後求められる教師の専門性について、奈須氏は本書の最後に3点整理しているので、ぜひ参考にされたい。
(2200円 東洋館出版社)
(重森 栄理・広島県教育委員会参与)

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