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夜間中学で学ぶ喜びを求めつづけた世界一幸せな先生

18面記事

書評

高橋 うらら 著
魅力伝える“ドキュメンタリー”

 夜間中学と聞いて、すぐに思い出すのが、本書の86ページにも紹介されている山田洋次監督の映画「学校」(平成5年公開)である。映画の中で、18人の俳優以外の登場人物を演じたのが、夜間中学の生徒や卒業生、教師たちだった。さまざまな事情で中学校に通えなかったり、卒業できなかったりした、年齢も国籍も異なる生徒たち。そして、彼らの学びを懸命に支える教師たち。彼らが織りなす人間模様は、多くの人に感動を与えた。
 本書は、昭和36年から40年以上にわたり夜間中学の教師として多くの生徒に慕われてきた見城慶和先生へのインタビューを中心に、夜間中学での学びの素晴らしさを伝えたドキュメンタリーである。夜間中学に通う生徒たちは、1960年代には、昼間住み込みで働きながら学ぶ年少者が多かったが、近年では、外国籍の若者の割合が増えてきているという。
 見城先生によれば、夜間中学の魅力は、年齢、国籍、職業など多様な生徒が集い、少人数で自分のペースで学ぶことのできる場であることだ。不登校で卒業証書だけ受け取って形式的に中学を卒業した子どもでも、夜間中学の温かい雰囲気の中で学び直しが可能だ。
 日本語を読み書きし、知識を得て、それを自らの生活に生かしていく生徒たち。彼らに伴走する教師たちが苦労の末につかんだ喜びの声が、高く強く読む人の心に響いてくる。
(1650円 新日本出版社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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