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「誰一人取り残さない」情報共有の可視化が生み出した新たな価値

10面記事

ICT教育特集

全教職員に欠席状況が共有されるため、学校全体でサポートができる

事業構想×デザイン思考から生まれた教育DX
「COCCO」(コクー)がもたらした変革

 学校のDX(デジタルトランスフォーメーション)が、学習面だけでなく保護者と学校とのコミュニケーションにおいても急拡大している。株式会社137の学校連絡・情報共有サービス「COCOO(コクー)」は、教員の長時間労働の解決、情報共有のしやすさ、さらには不登校の児童生徒の救済にも着目したサービスとして注目されている。今年EdTech導入補助金を活用してCOCOOを導入した大阪府守口市教育委員会の鮒谷尚氏、導入から2年目を迎えた東京都墨田区教育委員会の楢原哲史氏にCOCOOを選んだ理由、導入後の効果などについて話を聞いた。

多言語対応の自動音声で24時間受付
電話もウェブも欠席連絡が可能に

 守口市は、国の押印廃止に伴う文書のデジタル化推進を契機にデジタル連絡ツールの導入検討を本格化した。COCOOを知ったのは、ある学校の教頭先生から、「COCOOが優れているという保護者からの声がある」と情報を聞いたのがきっかけだ。「紙などのコストカットはもちろん、印刷・配布の手間を減らし、ひいては働き方改革にもつながる。COCOOの総合力の高さに惹かれました」と大阪府守口市教育委員会・鮒谷氏。
 ウェブだけでなく電話で欠席連絡ができるのが他社との大きな違いだ。「24時間自動音声対応でプッシュ操作が可能。家庭や学校間のデジタル環境の格差を乗り越えられると思った」と振り返る。EdTech導入補助金の後押しもあり、問い合わせから3カ月で全校一斉に導入することができた。
 守口市では、欠席連絡以外にも、写真に短文を添えた簡易版学校便りなどの発信をしている学校もある。長期休暇中もこまめに発信できるため、教員や子どもたちの様子がよくわかるとの保護者の声も聞かれ、デジタル化をポジティブに受け止めてもらうきっかけにもなっている。

信頼と安心感で人は「つながる」
学校・自治体全体で子どもを見守る

 想定以上の効果をもたらした事例も既に生まれている。ある学校では、COCOOを導入した2日後に、1年間、不登校が続き、家庭とも連絡が取りづらかった生徒の保護者から連絡があったという。それをきっかけとして学校が対応を続けた結果、現在その生徒は登校できるまでになった。「文字入力なら学校と対話がしやすい保護者の存在に気づきました」と鮒谷氏は語る。
 また、職員室のモニターに学校全体の欠席状況と保護者からのメモが共有されるため、学校全体で児童生徒を見守る体制がより強固になったという。COCOOを活用して手厚い見守りができることで、学校全体の連携が深まると同時に、保護者は学校とつながっている安心感、教員への信頼感を深めていると実感している。
 同氏は、「COCOOは『気にかけているよ』という気持ちが伝わりやすい。『誰一人取り残さない』というCOCOOの理念が胸に落ちました」と語る。「蓄積されたデータから子どもたちの傾向・推移を分析し、個に応じた支援につなげていくためにも、COCOOの活用で『教育の質』を高め、ひいては子どもたちの学校生活をより豊かなものにできるよう努めていきたいです」と今後の抱負について話した。

時間やコストを節約するだけでなくより良い学びの未来づくりへ

 墨田区は3年前、災害時の対応も含めて保護者と確実に連絡を取り合えるシステムの導入を検討し始めた。デジタル化で校務をシンプルにし、人にしかできないことに時間をかけたいという思いで業者を絞り込んだ。ちょうどその頃、ある学校の校長先生から「COCOOが優秀」との情報が入った。「『誰一人取り残さない』がCOCOOの理念。『子ども・保護者・教員三方が幸せに。真のDX化は暮らしをよくしてこそ』と考えている私たちと相通じるものを感じました」と墨田区教育委員会・楢原氏。
 墨田区は外国人世帯も多く、なかには学校だけが社会とのライフラインという家庭もある。誰もスマホを持っていない家庭や日本語での対話が難しい家庭ともコミュニケーションがとれることを重視して、保護者が登録した固定電話でも24時間欠席連絡ができる多言語対応の、COCOOを採用した。

朝の職員室の電話がほぼ鳴らなくなった

 出欠連絡は24時間自動集計なので朝の教員の業務に余裕が生まれ、子どもたちとの対話が増えた。毎朝、不登校気味の子どもの前で欠席連絡をするのが苦しかった保護者も、COCOOで心の負担が大きく減った。保護者からのメモも、管理職やその他の教員も見られるので教員同士で目配りができるなど、COCOOが学校のあちこちでコミュニケーションの種をまいている。

区全体で子どもたちを支援

 墨田区は、学校と自治体をつなぐ「自治体COCOO」も利用している。欠席者数、欠席理由などを教職員や保健所が入力せずとも統計データとして自動集計され、リアルタイムで学校から自治体に情報共有できる。
 墨田区内35校への導入は、準備の度合いに応じて3グループに分け、準備が整ったグループからリレー形式で順次スタートした。「先行グループの感触がよいと後に続くグループのモチベーションが上がる。ノウハウも享受できてストレスがない。3カ月で全校導入することができました」と楢原氏は話す。
 最後にこれからのCOCOOを使用した教育の在り方について、「COCOOがコミュニティーになって皆で子どもを育てられたらいい。これからも学校が『人』を育てる場であり続けられるDXを目指します」と語った。
 本製品の詳細は次のURLから確認できる。
 https://www.cocoo.education/

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