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一語から始める小さな日本語学

13面記事

書評

金澤 裕之・山内 博之 編
ユニークな視点で身近な言葉を探究

 本書は、17人の日本語学研究者の手による新たな日本語学研究の試みである。普段何げなく接している言葉に隠されている秘密が徐々に解き明かされていくような、そんなワクワクした感覚を味わいながら読み進めた。
 著者たちは、日本語以外の言語を母語とする留学生や日本語母語話者の学生に対する豊富な教育活動の経験を持つ。そうした活動を通して抱いた疑問や興味に基づき、それぞれの著者は一つの語に注目し、研究の素材とする。その語とは、名詞、動詞、形容詞のような実質語である。次に挙げた五つの章のタイトルには、研究の出発点が表現されている。「わーい」っていつ使う?(第1部)、教授のおっしゃるとおりです(第2部)、母は親切です(第3部)、さっくり混ぜる(第4部)、きっかり10時(第5部)。その他の章も含めて、タイトルからして読者の目を引く。
 研究の始まりとしての一つの実質語は、さまざまな日本語コーパス(書き言葉や話し言葉)や独自の調査によって、その意味や役割が徹底的に究明されていく。そのプロセスは、論理の筋道を丹念に追っていくものであり、明快で知的好奇心を満足させてくれる。さらに、たとえ小さな発見であっても、大きな研究的な価値を持つと感じさせてくれる。
 読者は、児童・生徒が発する言葉の重みや大切さを再認識することができるであろう。
(2860円 ひつじ書房)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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