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一刀両断 実践者の視点から【第269回】

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肝が抜かれた「道徳」

 連日のように人身事故が起こっています。家庭内殺人も起こります。悲惨な事件や事故が途切れる事はありません。私は強い危機感を覚えます。
 学校における道徳の時間は、社会科から派生的に出てきたとされます。当時、社会科教員には左派的な思想性があった為、比較的、保守傾向が強かった国語科の要素が強まりました。
 その結果、道徳を学んで行動するという肝が抜かれてしまったのです。
 よって、出来るだけ急いで国語科からの決別を進め、特別活動や総合的な学習という、活動、行動をねらいとするエリアへ急速に移行させないと、道徳はさらに読解力等にすり替えられて本来の行動から遠ざけられ、骨抜きになります。
 本来、国語科には社会課題を解決するとか、行動を促すなどの目的はないのですから無理があります。読み物ではなく、現実に働きかけるのが道徳なのです。それを私たちが踏襲放置した結果、今のような腑抜けの道徳にしてしまったのです。その責任は極めて重大です。青年の自死、いじめ、不登校が広がり、不幸の連鎖を見過ごしているのです。
 「道徳で人と社会を幸せにする」という強い意志を持って出講していると分かる講師が何人いるでしょうか。残念ながら皆無に近い気がします。これを容認しているとさらに無力感が全国に蔓延し、気付かぬ間に負の連鎖を支援する事になるのではないでしょうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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