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いじめの「空気」は変えられる!教室の小さな変化の起こし方

12面記事

書評

諸富 祥彦 著
「違和感」を具体的行動へつなぐ

 本書の「はじめに」の中で、著者はキッパリと書く。
 <いじめの本質は「空気」です。「空気」という得体の知れないものこそ、「いじめの正体」なのです。ここに、いじめ問題のむずかしさのすべてが集約されています>
 目の覚めるような指摘である。なぜいじめが発見しにくいのか。この「空気」を読めないで、つい放任してしまう教師が多いからである。
 しかし、いじめの「空気」を察知しても、具体的な行動を起こさなければ、いじめは深刻化する。そこで著者は、「何かおかしい」「このままでは変だ」などと「空気」に違和感を持ち、自分にできる小さなことを積み重ねていくことを推奨している。
 よく教師間で言われることがある。いじめに気付かなかった―と。これはある意味詭弁である。初期段階の教室を支配する小さないじめは必ずあるからだ。この「空気」を素早くキャッチして、深刻化する前に対処するか否かで学級担任の力量が問われる。
 著者は大学教授で、学校心理士スーパーバイザーとして、数多くのいじめ事例に接し、教師向けにその解決策を提案してきた。
 本書を読むと、あらためて「いじめ」問題の解決には、教師が教室内に生まれるいじめの空気の変化に敏感でなければならないことを教えられる。
(1760円 図書文化社)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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