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学校力が向上する遠隔合同授業 徳之島町から学ぶへき地・離島教育の魅力

18面記事

書評

北海道教育大学へき地・小規模校教育研究センター 監修
福 宏人・前田 賢次・川前 あゆみ・玉井 康之 編
ICTを活用した学びの可能性

 本書が取り上げるのは、鹿児島県徳之島町における、ICTを活用した遠隔合同授業の実践である。離島(へき地)の極小規模校におけるバラエティー豊富な実践では、児童間・教師間それぞれで相互的な学び合いが展開され、さまざまな可能性を感じさせる。
 この実践は一朝一夕に完成したものではない。本書序盤では2014年度からの蓄積が紹介され、環境の整備充実のプロセスと実践の質(=児童の学びの質)が高まる様子が示されている。教育委員会として、もしくは学校として同様の実践を進めたいという関心のある読者にとっては、どこから着手し、どう展開するのかを考えるヒントになるだろう。そして中盤では、遠隔合同授業の実践例が紹介されている。実際の児童の発言を含めて授業の様子が再現されているため、遠隔合同授業を実際に展開したいと考える教師にとっては、具体的に自身の実践を想定する材料になるだろう。
 終盤では、これまでの実践で展開・共有されてきた知識や理念などを研究者が整理している。遠隔合同授業に適した単元やカリキュラムや、実践を下支えする共通理解の分析に加え、遠隔合同授業が(児童の学力だけでなく)教師や学校の力をどう高めているのか、といった点も分析される。教師の力量向上や学校の組織開発としても意義のある提案であり、多くの読者で受け止めてみたい。
(2860円 教育出版)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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