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みんなでつくるインクルーシブ教育

12面記事

書評

平野 智之・菊地 栄治 編著
木村 泰子・倉石 一郎・中田 正敏・油布 佐和子・池田 賢市 著
「ともに学ぶ」豊かさを訴える

 令和4年9月、国連の障害者権利委員会が日本政府の政策の改善点について勧告を発表したのは周知の事実である。
 今回問題となったのは、日本の「分ける教育」を是とするインクルーシブ教育である。本書は「『ゆたかな学び』としての学校づくり」研究委員会が行ってきた議論を読みやすくまとめたものだ。
 まず実践例として「みんなの学校」で有名な大阪市立大空小学校や早くから「準高生」という取り組みを実践していた大阪府立松原高校が紹介される。さらに流行する「生きのびる」「包摂」という概念について、また高校におけるインクルーシブな組織文化の形成についての考えが述べられている。
 次に担い手としての教員、特に改革志向の「社会派教師」の出現の困難さについて述べている。現状の教職課程の課題だけでなく、教員になることに潜む問題(教員集団の同質性、社会的視野の希薄)も指摘している。他にもインクルーシブ教育の国際的潮流や他者と「ゆたかさ」をつくる教育として、各章の主張をまとめている。
 全体を通して「分ける」ことが支援教育の充実という考え方に反対し、「ともに学ぶ」教育の推進を訴えている。
 障害に限らず、以前から課題のある生徒を受け入れる等、オルタナティブな学校はあった。インクルーシブ教育もオルタナティブな取り組みで終わらせないことが重要だ。
(1430円 アドバンテージサーバー)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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