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「もうひとつの京都」 修学旅行 現地視察会レポート

9面記事

企画特集

お茶と宇治のまち交流館「茶づな」での学芸員による案内

 京都は年間約74万3千人の修学旅行生が訪れる日本の歴史と伝統文化が学べる魅力の場所。京都府と公益社団法人京都府観光連盟は、3月16日と17日の1泊2日で、公立中学校関係者らを対象に「もうひとつの京都」をテーマに京都修学旅行の新機軸を提案する現地視察会を開催。全国修学旅行研究協会(岩瀬正司理事長)の呼びかけにより首都圏の中学校関係者らが参加し、和束(わづか)町、宇治市、亀岡市、京都市の各招請地を視察した。その様子の一部を紹介する。

京都修学旅行の新たな可能性

 今回の視察会は、従来からの修学旅行定番コースに対し、主に持続可能な開発目標(SDGs)を目指す企業や団体の取り組みを教育プログラムとして提供する場を「もうひとつの京都」として紹介するというもの。
 具体的には「環境学習」「平和学習」「農業体験」「文化学習」「産業学習」の5つの学習テーマを府内4つのエリアで学習・体験する。京都市内から車や電車でアクセスできる『海の京都』『森の京都』『お茶の京都』『竹の里・乙訓(おとくに)』と呼ばれる各エリアを「もうひとつの京都」として総称している。
 視察会の行程は1日目に京都やましろ地域(和束町)での農泊・民泊体験の教育プログラムの説明を受け、京都市内に戻り「京都教育旅行プログラム」の説明会と意見交換会に参加。2日目は お茶と宇治のまち交流館「茶づな」を見学。その後、亀岡市での環境学習プログラム講演を受講。最後に京都府京都文化博物館を見学した。

『お茶の京都』での農泊・民泊体験

「和束荘」で農泊・民泊体験の説明を受ける

 京都やましろ地域は京都府南部に位置する宇治茶の名産地。ここでは和束町、南山城村、笠置町を中心に農泊・民泊体験を展開している。1日目、一行は農泊受入地域となる和束町の茶畑景観を見学後、引率者の宿泊本部となる「和束荘」で農泊・民泊体験の説明を受けた。
 体験では、例えば1泊2日の場合、修学旅行生らは、「入村式」で受け入れ家庭の方々と対面。各家庭に入るとお茶摘みやお茶の郷での家業体験、家庭料理作りを手伝って皆で夕食を囲む。夜は家族とのだんらんや、昔ながらの遊びや体験をした後に就寝。翌日も家業体験の後、「離村式」でお別れ、といった滞在プランとなる。異世代との交流や、日常と異なる貴重な生活体験には大きな教育効果があるという。
 また、安全や衛生管理について受入家庭に向け定期的に研修会を開催するなど周到な受入体制ができている。参加者からも「民泊への見方が変わった」「奈良や京都での歴史学習と組み合わせる事もできる」といった声が聞かれた。
 2日目には、2021年にオープンした宇治市のお茶と宇治のまち交流館「茶づな」を見学。宇治茶の歴史や栽培・製茶方法等について学芸員の説明を受けた。またここでは、「茶香服(聞き茶)」プログラムを体験した。

『森の京都』での環境学習プログラム

保津川遊船企業組合の豊田 知八 代表理事による講演

 その後、宇治市から、『森の京都』の亀岡市に移動。亀岡市は、市議会と共に平成30年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行った〝SDGs未来都市〟。ここでは、地元・保津川遊船企業組合代表理事の豊田知八氏による保津川の環境保全講演を受講。
 観光船・保津川下りに従事してきた豊田氏が、保津川渓谷の自然景観に影響を与えるペットボトルやレジ袋・発泡スチロールなど、流域に漂着するプラスチックごみとの戦いに挑んだところから、やがて日本初のレジ袋提供禁止条例を実現させるまでが話された。
 現在では、プラごみ削減の目標をパートナーシップで達成しようとする「亀岡保津川モデル」を次世代に伝える教育プログラムを提供。6~7名が乗れる「保津川エコnaラフティング」では、途中岸に上陸してのごみ拾いや水質調査体験など、『森の京都』エリアでの民泊とセットでの体験プログラムも可能となっている。
 今回の現地視察会に参加した教師たちからは、京都修学旅行の新たな提案に対し好意的な意見が多く聞かれた。
「農泊・民泊体験が一番印象に残った。現地の人との体験、文化とのふれあいは建造物を見てのこれまでの修学旅行のイメージを一新された」など、京都ならではの新たな価値ある体験に今後も期待する声が多く聞かれた。

「もうひとつの京都」『海の京都』『竹の里・乙訓』

『海の京都』

 『海の京都』は日本海に面した京都府北部地域で、古代より大陸との交流の窓口として栄えたエリア。ここではかつて海軍の軍港であった舞鶴市での「平和学習」が注目される。
 舞鶴市は第2次世界大戦後、旧ソ連(現ロシア連邦)、中国など大陸からの引揚者を受け入れた歴史を持つ。同市「舞鶴引揚館」での平和学習プログラムでは、シベリア抑留や引き揚げの労苦の史実を通して、平和を希求する心を育む事ができる。
 また、「舞鶴れんがパーク」「五老ヶ丘公園」など、舞鶴市の成り立ちと歴史を学ぶプランも興味深い。
 なお、平和学習とセットにできる体験学習プランとして、「舞鶴かまぼこ手作り体験」「地域の漁師さんと学ぶ海のSDGs」等もある。

『竹の里・乙訓』

 『竹の里・乙訓』は、戦国時代に羽柴秀吉と明智光秀が戦った「山崎の合戦」があったエリアで、京都と大阪を結ぶ交通の要衝として古代から歴史の舞台となってきた。教育関連施設としては、竹林の景観保全の取り組みや、京銘竹について学べる「竹の資料館」長岡京の歴史と文化に関する出土品、模型、資料等を常設展示している「向日市文化資料館」がある。

「現地視察会」訪問施設情報

 一般財団法人 和束町活性化センター
 https://wazukanko.com/bureau/
 お茶と宇治のまち交流館「茶づな」
 https://uji-chazuna.kyoto/
 保津川遊船企業組合
 https://www.hozugawakudari.jp/
 京都府京都文化博物館
 https://www.bunpaku.or.jp/

 公益社団法人 京都市観光連盟
 Kyoto Tourism Federation
 検索キーワード=「もうひとつの京都教育旅行プログラム」
 E-mail=kyoto.education.trip@kyoto-kankou.or.jp(@は半角)

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