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「おもしろ」授業で法律や経済を学ぶ

16面記事

書評

熊田 亘 著
コンビニ例に契約を説明

 一般的に、教員にとって他者の授業実践事例はためにはなるが退屈だ。実践に生かすヒントは得られるものの、読み進めるのは面倒である。面白くないからだ。本書もいわば実践事例集だ。読み始めた。お決まりの退屈さを感じない。看板(「おもしろ」授業)に偽りなし。一気に読み終えた。そして思った。こんな授業をしてみたい、と。
 本書は、お堅い教科の法律と経済に関する事例集である。評者もそうだったが、どうしても建前や理屈が表に出てしまい、結果として面白くない授業になりがちだ。ところが、本書は趣を全く異にする。その理由は多岐にわたるが、あえて3点に絞って紹介する。
 (1)綿密な授業計画があること。第1はハゲ談義となっているが、これとて奇をてらうのではなく論理的思考を促す仕掛け付きだ。
 (2)生徒の日常生活や具体的事例や体験との関わりを考慮している。例えば、契約の概念はコンビニの買い物が登場する。
 (3)QA形式を多用し、生徒の自己決定を促している。授業の進行に生徒の判断が求められ、そこから議論が始まる展開が工夫される。
 後半の授業ノート、「退屈」という名の便り、参考にしたい実践が続く。本書ほどまねてみたいと思った事例はなかった。「学ぶ」の語源は「まねぶ」だそうだ。実践が広がれば新たな事例集も生まれよう。楽しみに待ちたい。
(1620円 清水書院)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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