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もう一度考えたい「ゆとり教育」の意義

14面記事

書評

辻村 哲夫・中西 茂 著
現代教育史に貴重な資料

 教師が創意工夫しさまざまな指導法を駆使して分かりやすい授業をし、子どもたちは自ら調べる学習、体験的な学習、問題解決的な学習などに取り組む…。いつの学習指導要領についての説明か分かるだろうか。負のイメージとして「ゆとり教育」とレッテルを貼られてしまった平成14年度から実施した学習指導要領である。完全学校週5日制下の教育課程であり、総合的な学習の時間を創設した。
 本書は当時、「ゆとり教育」政策を推進した文科官僚と、必要性を感じながら報道に当たった大手新聞記者が時を経て筆を執り、反省点を含めて、その意義や意味を現代によみがえらせた。
 平成14年度実施の学習指導要領を「究極のゆとり教育」、そこに至る「学校裁量の時間」を創設した昭和55年度から実施の同要領を「第一のゆとり(教育)」、「新しい学力観」を求めた平成4年度からの同要領を「第二のゆとり(教育)」とそれぞれ呼び、「究極のゆとり教育」が何を目指したか、その狙いがなぜ変質したのか、現状の教育改革に生かしてもらいたいことなどを提案する。
 学習指導要領を「最低基準」と強調し始めたことや、実施直前に「学びのすすめ」が大臣から発せられたことに対して、当時の学校管理職から珍しく戸惑いの声が上がったことが書評子の記憶にも残る。
 現代の教育史を考える上で、貴重な一冊が誕生した、とは言い過ぎだろうか。
(1980円 悠光堂)
(矢)

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