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ゼロからはじめる哲学対話 哲学プラクティス・ハンドブック

12面記事

書評

河野 哲也 編
得居 千照・永井 玲衣 編集協力
話し合い通じて思考深める

 「哲学」と聞くと、何やら難しい学問だと思う人が少なくないだろう。「哲学対話」と聞けば、自分とは無縁の世界のものだと感じてしまうかもしれない。本書を読むと、そうした誤解はスーッと解けていく。哲学が、私たちのごく身近なものであることが分かってくる。
 この世の中には、多くの人が当たり前に思っていることがたくさんある。「なぜ人は生きるのか」「なぜ人は人を愛するのか」。そうした問いに答えを出すことは容易ではない。
 哲学対話では、こうした「自明の問い」について、ファシリテーターと参加者が意見を交換する。相手の発言を傾聴し、自分の考えを述べていく。参加者たちは、答えを求めるのではなく、話し合う場を共有するのである。
 そのプロセスで、認識の変化が生じることもある。そうした気付きを大事にすることで、哲学的思考は深まっていく。この世界のさまざまな問題について、批判的に、かつ内省的に考えることができるようになるのだ。
 哲学対話は、子ども哲学(p4c:philosophy for children)や哲学プラクティスとも呼ばれ、学校教育や企業で活用されている。あるいは、街角で開かれる哲学カフェでは、集まってきた多様な人々が哲学対話を繰り広げる。ソクラテスに端を発する哲学対話。現代を生きる私たちに、必須のものといえるだろう。
(2420円 ひつじ書房)
(都筑 学・中央大学教授)

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