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間違いだらけのインクルーシブ教育

12面記事

書評

多賀 一郎・南 惠介 著
現実と闘う現場目線での提案書

 「発達障害だけではなくて、外国人の子どももLGBTの子どもも、みんなを含んで一緒に教育していけるような場を作っていかなければならないと考えています」。それが著者らの「インクルーシブ教育」である。
 それ故、重なる部分はあるものの「『インクルーシブ教育』は特別支援教育ではない」と言い切るのだ。
 教室内に「ずっと喋りたがる」「じっとしていられない」「見通しが持てない」子どもがいれば「ずっと喋っていい授業」「動いて良い時間を子どもたちの様子に合わせて授業計画の中に入れた授業」「『具体的な見通し』を最初に示した授業」を試すことを提案する。特別支援学級そのものを否定しているわけではなく、教師にとっての「排除」につながらないように試行錯誤を求める。
 こうした視点からは「協同学習」を含めたさまざまな学習方法を取り入れることや、教師による「管理統制一斉型の学級経営」ではなく、子ども主体となるような「受容共感協同型の学級経営」を選択することは必然のようにも映る。「子どもを見る、そしてまずは子どもを受け入れて、そこからスタートしてみる」姿勢で一貫する。
 発達障害のある子が他害行為をした際の「加害児童」「被害児童」の保護者にどう寄り添えばいいかも、提示した。
 理想を抱くことを恐れず、現実と闘う現場目線での提案書である。
(2090円 黎明書房)
(矢)

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