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一刀両断 実践者の視点から【第73回】

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論説・コラム

教員増だけでは効果上がらぬ小学校

 小学校に教科担任制を本格導入しようと文科省が予算要求を行い、配置を目指す人数が発表された。実現しても、1校あたりの人数はわずかだから性急に対応を考えることはないだろう。
 私は30年も前にやっていたのでその効果と課題について、少しは体感している。
 ここでは教員を増やすことのデメリットを敢えて伝えたい。ある裕福な自治体は独自に担任補佐を各学級に配置していた。この分担軽減や複数の目で見ることに有益な反面、期待以上に学習意欲や学力などが向上しないのである。
 この自治体の教育長から直に相談をされたから、その意識をもって授業や学校生活を見つめてみた。特に授業でその原因が直ぐに分かった。結論は、「譲り合い」であった。
 よほど役割分断ができているか、阿吽の呼吸ができる域まで来ていたのなら、この「譲り合い」も効果を発揮するが、打ち合わせの時間も確保できずにアドリブとなると上手くいく事はほとんどない。
 打ち合わせのないままで顔を見合わせる役者のようにも映るのである。人が多くいてもその効果を出すには、シナリオがしっかり出来ていて、相互が読み込んで咀嚼しておかなければならない。これができていて、アドリブも可能になる。
 どんな方法で、どんなシナリオでやるかを練習しておかないと、実にみっともなく、面白味も効果もない茶番劇になってしまう。
 是非、複数の目で見る習慣を増やし、決めつけない習慣を教師相互に養うことが必要に思えてならない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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