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ブルデューの教育社会学理論

12面記事

書評

教育システムと社会階級・社会秩序の再生産と変革の理論
小澤 浩明 著
「再生産論」はじめ理論の全体像に迫る

 たとえ貧しい家庭に生まれても苦学すれば立身出世(社会移動)できるといった「蛍雪の功」は幻想にすぎず、むしろ教育は不平等を再生産し階層を固定化させる装置として機能しているという見方は、<子どもの貧困>が可視化されるようになった今日、実感として共有できるだろう。入学者選抜方法も単なる競争試験ばかりでなく、面接や小論文、芸術・スポーツ活動の実績による推薦入試が拡大している今日、家庭の経済力だけでなく、「文化資本」やジェンダー、エスニシティが不平等の再生産に寄与しているといった指摘も共感されるのではないだろうか。
 <再生産>論で知られるフランス社会学者ピエール・ブルデューの日本での一般的受容はこうした概念や枠組みの理解と援用にとどまっており、全体像を把握できていない。
 本書は<権力と正統性>の視点から人間の慣習行為を分析するブルデュー教育社会学を初期の理論生成期から、「理論転回」期を経て、ネオ・リベラリズム批判など教育社会学研究においては射程外に置かれてきた『再生産』以降の論考まで隙のない筆致で整理し、その理論的射程と意義の確定を目的とする。ブルデューの思索の広さや深さだけでなく、著者の30年に及ぶ理論研究の蓄積が一冊に凝縮された本書に流れている時間は濃厚であり、悠久な時間を共有でき読み応えがあった。
(3740円 学文社)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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