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差別のない社会をつくるインクルーシブ教育 誰のことばにも同じだけ価値がある

15面記事

書評

野口 晃菜・喜多 一馬 編著
当事者はじめ多彩な執筆陣

 マイノリティ当事者や家族、学生、福祉・医療関係者、研究者、教員、行政職員、会社員など多様な人たちから成る研究会のメンバーを中心に26人で分担執筆されたもの。
 野口晃菜さんによるインクルーシブ教育についての総論的な文章の他、障害、貧困、性教育、いじめなど学校に関わる幅広い問題をカバーしており、読み応えがある。
 本書ではインクルーシブ教育を、2005年のユネスコのガイドラインを参考に「多様な子どもたちがいることを前提とし、その多様な子どもたちの教育を受ける権利を地域の学校で保障するために、教育システムそのものを改革していくプロセス」と定義する。
 特に重要な視点は、障害のある子どもだけでなく、全ての子どもたちのためのものと捉えていることだ。従って、いわゆる特別支援教育に限らず、通常の教育の枠組み自体をインクルーシブにしていくための議論が必要だとしている。
 障害(難病)当事者の「障害者であるということで、選ぶこと、決めること、決めたことに責任を持つことを経験できずにいる人が多くいる」との記述は、障害以外にも多くの場合に当てはまる。
 学校や社会がなぜインクルーシブでなくてはならないのか。本書は、考えを深め、学校での実践につなげるヒントになる。
(2860円 学事出版)
(浅田 和伸・前国立教育政策研究所長)

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