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大学入試改革 共通テストへの反映、2024年度から

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 今夏に開催する教育セミナーでは、大学入試改革に加え、今年4月に告示された高校の新学習指導要領もテーマにしている。大学入学共通テストでは2024年度から新課程に基づく試験に見直される。科目の構成や内容が大きく変わった教科をまとめた。

国語
実社会で生きる言語能力重視

 国語は、必履修科目が現在の「国語総合」(4単位)から、「現代の国語」(2単位)と「言語文化」(2単位)に分割された。以降に示したような、それぞれの科目の狙いを、より着実に実現させるためだ。
 「現代の国語」は実社会で必要となる読解力や表現力を育成する。例えば「B書くこと」では、実社会の中からふさわしい題材を選び、情報の妥当性や信頼性を吟味しながら伝えたいことを明確にする。また「C読むこと」では、文章や図表を読み取り、意図を解釈したり、論理展開を評価したりする。そのための指導として、理解・解釈したことを文章から図表など別の形式に書き換える活動を掲げている。
 一方、「言語文化」は漢文を含む古典や、近代以降の文学的な文章を題材にして日本の言語文化への理解を深める。「B書くこと」では「本歌取り」などの技法を使って短歌や俳句を作ったり、伝統行事などの文化的な題材で随筆を書いたりする学習に取り組むことが盛り込まれた。
 選択科目も大きく見直される。「現代の国語」と同様、実社会で生きる言語能力を重視した「論理国語」と「国語表現」。文学や映画を題材にした「文学国語」と「古典探究」だ。
 「論理国語」は実用的な文章、社会的な話題について書かれた論説文などを題材に、書いたり発表したりする内容。「国語表現」ではスピーチ・インタビューといった活動を取り入れ、企画書や報告書の作成も行う。
 国語では教科全体を通じて、語彙の習得、主張と論拠の関係の理解など、情報を的確に理解し、効果的に表現する力の育成が目指されている。
 大学入学共通テストの内容を占うプレテストの実施方針でも問題作成の方針を「与えられた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面に応じて文章を書いたりすることなどが求められる」としている。

外国語
4技能の統合的指導求める

 小学校から正式な教科となった外国語は、高校ではこれまで以上に「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能の育成を重視する。また、今回から「話す」は「やり取り」と「発表」に分け、それぞれに異なる目標・内容を設定した。
 高校生の英語力調査では「話す」「書く」の力に課題があった他に、4技能をバランス良く身に付けるための指導も十分でなかったことが課題とされてきた。そのため、聞いたり読んだりした内容に基づいて話したり、書いたりする統合的な言語活動を積極的に取り入れることを求めている。
 改訂後の科目構成は「英語コミュニケーションI〜III」と「論理・表現I〜III」。必履修は「英語コミュニケーションI」にした。「英語コミュニケーションI」は、中学校の学習内容を確実に定着させる内容も含んでおり、標準単位数は3単位ながら学校によって2単位に減らすことができる。
 指導する語彙数も増える。英語コミュニケーションを通じて扱う語彙数は、現在の課程の1800語程度から、1800〜2500語程度になる。実践的なコミュニケーションを重視するため、これまでより豊富な語彙力が必要になると想定している。
 新学習指導要領は「聞く」「読む」「話す」「書く」技能ごとに、目標や実際の言語使用場面と具体的な言語活動も明記しており、教員の授業改善を促す色合いが強いのが特徴だ。
 大学入学共通テストでは民間の資格・検定試験を使って4技能を測る予定で、入試を理由にした文法・読解中心の授業は通用しなくなる。高校間で対応に差が生まれないよう、新課程の目標に沿った授業改善が高校に求められる。

公民
主権者教育の役割担う「公共」

 「現代社会」に代わり公民の必履修科目になる新科目「公共」は、グローバル化する国際社会の中で主体的に社会に関わり生きようとする態度や、そこで求められる資質・能力の育成を目指す。選挙権や成人年齢の18歳引き下げに伴い、「公共」が担う役割は大きくなる。
 内容は、初めに公共的な空間と人間の尊厳・平等などを取り上げる。次に法や政治、経済などを主題に扱い、最後に持続可能な社会づくりについて、自分の考えを説明したり、論述したりする。
 「公共」は現実社会にある課題解決の力を育てるため、討論やディベート、模擬選挙、模擬裁判など授業で取り組むべきさまざまな活動も例示している。
 その一方で、教えるべき内容は多岐にわたる。
 例えば「法、政治、経済」などを扱う項目では、消費者契約、司法参加の意義、地方自治と国家主権、安全保障と防衛、職業選択と労働問題、租税、社会保障、金融―などが盛り込まれている。司法参加では、辞退率の高さが深刻な裁判員制度も扱うこととしている。こうした内容について、標準単位の2単位の中でどこまで理解を深めさせることができるかが課題となりそうだ。
 「公共」で身に付けた力を基に、選択科目の「倫理」と「政治・経済」を学ぶ。「倫理」は、古今東西の思想家の考えをたどり、人間の生き方などを深く考える。
 「政治・経済」では、社会の課題について、政治・経済を総合的に探究する。
 大学入学共通テストでは「公共」がどのような出題になるのか注目される。

地理歴史
近代日本・世界史を「総合」で

 今回の改訂の中で、最も大きく変わるのは地理歴史だろう。現行の必履修は世界史と、日本史・地理から選択で選ぶこととなっているが、新課程では「地理総合」と「歴史総合」が必履修科目になる。
 二つの総合科目は、ともにグローバル化する国際社会の中で、平和で民主的な国家や社会を形成する資質・能力を育てることを目標としている。
 「地理総合」は三つの内容で構成。地理情報システム(GIS)を使った課題解決活動に取り組みながら国家間の結び付きなどを学ぶ「A地図や地理情報システムで捉える現代世界」、世界の多様な生活文化と地球規模の国際協力を扱う「B国際理解と国際協力」、自然災害に対応したハザードマップをまとめることなどが盛り込まれた「C持続可能な地域づくりと私たち」がある。
 「歴史総合」は18世紀以降の近現代史について、日本と世界を関連付けて学ぶ科目。四つの単元で、アジアと欧米諸国の関係、二つの世界大戦と経済危機、冷戦後の国際政治の変容―などを扱う。
 現行の世界史・日本史のA科目を合わせたような内容だが、扱う時代の範囲が狭くなるため、一部の教員からは歴史的事象の背景や関連をより深く指導できると歓迎する声もある。ただ、専門科目で担当が分かれている現在の高校の指導体制で、どこまで対応できるのか課題は残る。専門としている教員の少ない地理も同様だ。
 選択科目は「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」の3科目が新設される。現行のそれぞれのB科目の後継となる。
 大学入学共通テストで「歴史総合」や「地理総合」、公民の「公共」などの必履修科目が出題されるのは2024年度から。入試センターでは記述式問題を導入する方向で検討を進めている。

情報
全生徒がプログラミング学ぶ

 小学校では複数の教科の中で、プログラミングの基礎を扱うことになった情報教育。高校の情報では、プログラミングやシミュレーションによる問題解決の学習などを全ての生徒が学ぶことになる。
 現行では、情報化が社会に及ぼす影響について学ぶ「社会と情報」と、プログラミングを含む「情報の科学」のいずれか1科目の選択必履修だったが、「情報の科学」の履修は約2割にとどまっている。
 新課程では、卒業後の進路にかかわらず、情報活用能力を育てる必要があるとして、プログラミングの学習を含む新設科目の「情報I」を必修にし、その上で発展科目の「情報II」を設けた。
 「情報?」は、情報モラルやデータ収集と分析も学習する。「情報II」では、文字、音声、静止画、動画を組み合わせたコンテンツの作成や、データサイエンスの手法を使った現象のモデリングを扱う。
 政府が6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」では、2024年度から大学入学共通テストで「情報I」を出題することについて、本年度中に検討を始めることを盛り込んだ。コンピューター方式(CBT)での実施を視野に入れるとしている。
 ただ、高校の情報科担当教員は、免許外教科担任が約3割を占めており、今後、自治体では専門教員の育成と配置が課題になりそうだ。

新学習指導要領で示された主な教科・科目

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