日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

高校の新学習指導要領と大学入試改革の方向性探る

8面記事

Topics

(株)ナガセ・本社主催
全国12会場で「夏の教育セミナー」

 東進ハイスクール・東進衛星予備校などを運営する(株)ナガセと日本教育新聞社は8月1日から21日まで、全国12会場で「新学習指導要領と大学入試改革」をテーマに夏の教育セミナーを開催した。特別講演で文科省や大学入試センターの担当者が、新指導要領や入試改革の方向性を話した他、分科会では大学入学共通テストの試行調査問題を基に授業づくりが提案された。高校教員を中心に約5千人が参加した。

特別講演
「共通テスト」作問のねらい 理解を
大杉 住子 大学入試センター審議役

 (独)大学入試センターの大杉住子審議役は「新学習指導要領と大学入試改革」と題し、高大接続改革のねらい、新学習指導要領の考え方、新テストに向けての動きなどについて講演した。
 特に、6月18日付で全国の高校、大学に発出した「『大学入学共通テスト』における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」と題した文書を中心に解説。文書発出以降の課題の検討状況などを交えて作問のねらい、記述式問題の成績表示イメージなどにも言及した。その中で、作問のねらいについての理解を求め、その重要性を強調した。
 同センターが主体的な学びにつながる授業を収集していることを明らかにしながら「授業から入試のヒントをもらっている。授業改善と良問づくりの相互のいい関係をつくる」と話した。

高・大・入試を一体的に変える
浅田 和伸 大学入試センター理事

 (独)大学入試センターの浅田和伸理事は「高大接続改革と新学習指導要領」をテーマに、大学入試改革の背景と高校の学習指導要領改訂の目指す方向性について講演した。
 浅田氏は「高大接続は単なる入試改革ではなく、教育改革だ」とした上で、高校教育と大学教育、大学入学者選抜を一体的に変えることにねらいがあると説明。高校側の受け止めとして「大学が変わっていないという印象があるかもしれないが、大学教育も明らかに変わりつつある」と述べた。
 その上で、早稲田大学が政治経済学部の入試で数学を課すよう見直したことなどを取り上げ、「大学教育をするために必要な力を入試で測るというのは、まっとうな判断。こうした傾向が強まることを期待している」と話した。
 新学習指導要領については、教員の教科意識が強い高校では、学校全体の教育内容を見据えたカリキュラムマネジメントを実現してほしいと求めた。

英語の外部試験活用 高校のニーズ調査
山田 泰造 文科省高等教育局大学振興課大学入試室長

 文科省高等教育局大学振興課の山田泰造・大学入試室長は「大学入学者選抜改革の動向」と題して講演し、「高大接続改革」の理念と経緯、高校教育の改革、大学教育の改革、大学入学者選抜の改革などに触れた。
 また、4技能の英語力を測る外部組織が参加してつくる「大学入試英語成績提供システム」に関連して、現在の高校1年生が3年生になった時に、どの試験をどこで受検するか、全高校を対象にニーズを調査中とし、ニーズを把握することで多くの地域で実施することや検定料への配慮を求めるなど、生徒の負担軽減につなげるねらいを話した。
 個別の大学入試改革について、33年度選抜実施要項の見直し予告では、総合型選抜(現行AO入試)や学校推薦型選抜(同推薦入試)では学力の確認を、一般選抜(同一般入試)での調査書活用の仕方の例示などを求めると説明した。

学力の3要素 高で育成、大で伸長
清原 洋一 文科省初等中等教育局主任視学官

 清原洋一・文科省初等中等教育局主任視学官は「新高等学校学習指導要領について」と題し、改訂のポイントを解説した。今回の改訂は、特に高校を意識した内容であり、グローバル化やAIの進展など社会の変化が激しくなる中、21世紀を生き抜いていける資質・能力を身に付けさせるためのものであると指摘。そのため2030年とその先の社会の在り方を考えながら、教育活動を展開することが欠かせないという。改訂の核になる高大接続改革については、高校と大学のそれぞれの授業を改善し、高校段階で「学力の3要素」を確実に育成、大学でさらなる伸長につなげることが重要とした。この3要素を多面的・総合的に評価するために大学入学者選抜改革に取り組んでいるという。
 清原視学官は「これからの社会を担い、創り出すのは生徒」と語り、学習指導要領の理念の具体化を求めた。

授業では「振り返り」大事に
長尾 篤志 文科省初等中等教育局視学官

 文科省初等中等教育局の長尾篤志視学官は教育改革の全体像について講演し、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、生徒が積極的に学び取ろうとしているかという視点で指導の改善に取り組んでいくよう求めた。そのためには授業中に「見通し」を持たせることや「振り返り」を行うことに重点を置く必要があると強調。
 特にペアやグループで議論する活動の場合には、一部の生徒だけが理解や思考を深めることにならないよう、「振り返り」を活用することを助言した。
 また、考えを深める場面では、生徒が自分自身でじっくりと考える「自己内対話」にも意義があると指摘した。「1学期に指導を見直した後は、1年、2年と継続して、各学校でできるところから着実に授業改善に取り組んでほしい」と語った。

学習評価の方針、年度内にも
濱野 清 文科省初等中等教育局視学官

 濱野清・文科省初等中等教育局視学官は「新学習指導要領と大学入試改革」をテーマに講演した。
 「新学習指導要領」については、「何ができるようになるか―育成を目指す資質・能力」「どのように学ぶか―主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)」などを詳しく説明した。
 また、正式に決まっていない学習評価にも触れた。学力の3要素として示された「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の三つを中心に見取る方針であること、このうち、特に「思考力・判断力・表現力等」に重点を置く見通しを示した。「本年度中には学習評価の方針が示される予定」とも語った。
 「大学入試改革」に関しては「高大接続改革」の必要性などを説明した後、地理の入試問題例を使って説明。「今後は知識をベースに思考力が試される問題が多くなる」と述べた。

分科会
英語
話す単語数を記録し合い評価
「リアル社会」での活用意識

 栄東中学・高校の辻潤副校長は、同校の英語の授業を動画で紹介するとともに、先行きが不透明な民間英語テストの大学入試での活用について心構えを語った。知識・理解がなければ、「主体的・対話的で深い学び」は難しいとの考えから、どのような入試になってもまずは、知識・理解を徹底することが大切ではないかと提案した。
 辻氏は、大学入試センター試験と、その後継となる大学入学共通テストの試行問題を比べると、文法問題がなくなると同時に、問題文が日本語から英語となり、同じ解答時間の中でより多くの英単語を読まなければならないことから、高校2年生の夏休みに辞書なしで読める英語の本を読むよう宿題として出したという。
 東大寺学園中学・高校の西山哲郎教諭は、4技能向上のためのスピーキングを重視した授業実践について紹介した。生徒がテーマに基づいて意見を発表する実践では3、4人のグループで、話す役1人と聞く役1人がやりとり。残りの生徒は、使われた単語数を記録するなどしてスピーキングの様子を評価した。話し合う前に、ネーティブスピーカーが考えを語る際に使う英語構文も学習。セミナーでは参加者同士でスピーキングに取り組んだ。参加者に対し西山教諭は、英語を母語とする幼児向けの絵本や辞書を、生徒に読ませるよう勧めた。教科書に載っていない単語を学ぶことがスピーキング能力向上につながるという。
 東進ハイスクール・東進衛星予備校講師の安河内哲也氏は、授業の合間に挿入できる短いスピーキング活動を幾つか紹介した。生徒同士で2人一組の会話を行うことを想定した、活動型の模擬授業を行った。活動は、1回の会話を行うごとに相手を入れ替えながら取り組んだ。内容は、一人が図形を暗記し、もう一人に英語で説明して紙に描写させるもの。また、ある状況設定の中の登場人物になりきって会話するものなどがあった。音読でのインプットと自ら考え文章をつくるアウトプットとを短い時間の中で交互に行うことで、生徒の英語への関心を高められることなどを説明した。
 「受験のための英語から英語を使う時代へ」―。今、英語学習の転換期にあると説明した坂本彰男・福岡女学院中学・高校教諭。求められている力の一つとして「概要・要点・意図を捉える力」を挙げた。その点を踏まえ、優先されるのは「英文の詳細理解よりも概要把握力の育成」と指摘し、「持続的速読力(リーディング・スタミナ)が欠かせない」と述べた。さらに、自らの実践も紹介。「教科書本文の図式化」に加え、「週1コマの授業内多聴多読」が功を奏し、文法力があまりなくても大意把握力が付くことなどを解説した。
 東京都立武蔵高校・附属中の山本崇雄教諭は、「リアルな社会」とつなげて英語を身に付ける授業を、ペアワークと解説を交えて説明した。山本教諭は、学校での学びが現実の社会と地続きであることを意識して取り組む重要性を強調。試験対策だけでなく、日常での活用を意識した英語の指導法を伝えた。
 例えば、思考を深めるノートの作り方。授業内容に関する問いを生徒自身で立て、分かったことを図と言葉でそれぞれ要約し、最後に問いの答えを書く。また、ノートを基にして他の生徒や教師に内容を伝えるアウトプットを行う。教材を社会問題につなげることで、「プロジェクトが生まれ、生徒自ら行動できるようになる」と話した。

国語
生徒の発言否定、考えさせる
唯一の解がない「問い」設定

 三田国際学園の湯尾健児校長は複数の資料を活用してディスカッションやリポート作成をする授業例を紹介した。授業の目標は「自分で『ふるさと』を定義しよう」。坂口安吾の「文学のふるさと」などの他、総務省が故郷に貢献する意欲を地域おこしに生かそうと検討してきた内容にも触れた。生徒は過疎化などの実情を知った上で施策を考案し、裏付けとなる情報を明確にしながら発表。「創造性」「自分で問題設定ができる力」を育てる授業例を受け、セミナー参加者は大学入試改革に向けて2学期から何に取り組むか考えた。
 東京都立町田高校の小林洋教諭は、大学入学共通テストの試行調査問題を分析しつつ、内容に対応した国語の授業とその理論を自らの実践を交えて話した。1年の最初の授業で「ことばとは何か」(内田樹)を取り上げ「非連続テクストの関係性を自ら見いだす」など知見を深める重要性を指摘。また、アクティブ・ラーニング型授業では授業者が生徒の発言を「否定して考えさせることの繰り返しが必要で、それをやって初めて主体的な学びに結び付き、思考力の向上につながるのではないか」と話した。
 「構成的アクティブ・ラーニング」の授業づくりについて講演したのは宮城県仙台第三高校の滝井隆太主幹教諭。授業者が教材や課題設定を周到に計画する探究活動の例を紹介した。授業づくりの中で、滝井主幹教諭が特に重要性を強調したのは主発問となる「問い立て」。唯一の解が得られない問いの設定が、「知的好奇心を揺さぶり、自律的な知識獲得につながる」と話した。世界の潮流となっているグローバル化について、反グローバル主義の視点から問題点を指摘した文章を読み、解決を探るといった課題を与えた。
 河口竜行・渋谷教育学園渋谷中学・高校教諭は、新テストで求められる学力を付けるために、「生徒が主体性を発揮する『アクティブビーイング』が欠かせない」と述べた。「対話の練習」が重要で、「対話力の向上が自信になり、生徒たちは能動的になる」と説明した。
 途中、「高校1年定期テスト」で出題した実際の問題を使ったグループワークも実施。ゴールを見据え、参加者同士で模範解答や採点基準をつくり、複数の答案を採点する場面もあった。河口教諭は「教師が主体性を発揮することが生徒の積極性につながる」と述べた。
 中央大学附属中学・高校の齋藤祐教諭は、自分が選んだテーマの論点を絞り込んで論証を組み、論文を仕上げる、高校生の論文作成の実践を説明した。
 目標は「『問い』が作れる人」になること。論文作成上の課題解決に向けては、探究マップの作成を導入した。探究マップは、「具体的な『問い』」「根拠」「具体的な『答え』」を繰り返し考えて作成。それが生徒自身の考えの可視化や一層の理解につながり、探究が深まっていくと説明した。
 福岡県立玄洋高校の松畠正則教諭は、従来の国語科の授業では教材への依存度が高く、学習単元と教材名を同じものと考える傾向があることを課題として指摘した。
 そこで自校での古文の授業実践を取り上げ、単元目標や学習計画、授業の振り返りを1枚にまとめた資料を毎時間の授業で活用している事例を紹介。「生徒たちに授業を通して身に付けさせたい力を明確にした上で、単元の考え方を変える必要があるのではないか」と語った。
 漢文を題材にした模擬授業を通して桐蔭学園中学・高校の川妻篤史教諭が強調したのは、「つなぐ」というキーワード。『四面楚歌』と芥川龍之介著『英雄の器』を読み取り、自分の経験や考えと関連付けて話し合うなど、「LTD話し合い学習法」をアレンジした自校での授業実践を紹介した。
 「授業で扱う作品と自分自身とをつなげて考えることがポイント。文章や会話、発表によって、生徒たちが自分の頭の中にある思考を外に出せるようにすることがアクティブ・ラーニング型の授業では重要になる」と話した。

数学
反転授業通じ生徒に主体性
ICT用いて二次関数考察

 豊田拓也・熊本県立八代清流高校教諭は、大学入学共通テストの試行調査からこれからの数学教育で求められる内容を解説した。従来の大学入試センター試験と比べ、問題の文章量が大幅に増加し、数学力の前に「文章読解力」が問われるようになったと語った。
 日々の授業でできることとして、教科書・本をしっかり読む、公式やその成り立ちをしっかり説明する、生徒の誤答を指導の財産にする、数学的に物事を捉えることを習慣化する―などを提案。参加者に対し、教師自身がアクティブラーナーになることで、生徒をアクティブラーナーに育ててほしいと投げ掛けた。
 広尾学園中学・高校の堀内陽介教諭は、反転授業の実践を通して、生徒が主体となって考える数学の授業の在り方を提案した。同校では、映像教材「EDuPA」を活用して生徒に予習してもらい、授業では問題を解くところから始めている。5通り以上の解答を見つける問題など出題の仕方を工夫した上で、生徒同士で話し合う活動を取り入れているという。「問題を解くために数学を学ぶのではなく、生徒たちが自分で考えている実感を持ちながら、数学そのものの理解を深められるような授業を考えることが重要になる」と話した。
 「私の授業改善」と題し、郷地倫秀・大阪星光学院中学・高校常勤講師は、「授業のやり方」を変えた理由や背景から説明した。目指すは、大学入試突破に向けてパターンを覚え込ませる授業からの脱却。「知識を活用する力」「学習への主体性」など、「社会に出てからも役に立つ能力を身に付けさせたい」と語った。
 模擬授業の後、自らが実践している「習得型」と「演習型」の授業展開の詳細を解説。こうした取り組みの根底には、「何より数学の授業を楽しんでほしいという思いがある」と述べた。
 立命館宇治中学・高校の酒井淳平教諭は、数学の授業を通じて育てたい力を考えるため、授業で取り組んだ論理・活用問題を紹介。生徒の会話や特定の法則で数字とアルファベットが書かれたカードから逆・裏・対偶を考える問題、数学を学ぶ上で大切な考え方(還元と帰着)を身に付ける問題について説明した。こうしたことから、これからの授業では「一番大切なところを生徒に気付かせることが重要」と力説。授業改善には「生徒の受け止め方の確認が必要」とし、グループでの問題解決を中心にすることが必要と述べた。
 コンピュータのグラフ表示ソフトを使った関数の授業について話したのは筑波大学附属駒場中学・高校の須田学教諭。プレテストの数学I・Aで出題された二次関数の問題を取り上げ、グラフの平行移動の様子をソフトで確認させる内容だ。
 須田教諭は「GeoGebra」と呼ばれるフリーソフトを使い、係数の値を変化させると頂点がどのように変わるのかを、ソフトや証明、グループワークなどの方法で生徒に考えさせるという。「試行錯誤の道具としてICTを使い、生徒に多面的に考察させることが大事だ」と強調した。
 日本大学櫻丘高校の木内保教頭は、図形やベクトルなど代表的な問題を取り上げ、生徒の学年や実態に応じて問題を精選する必要性があることを語った。また、新学習指導要領への対応として今後の数学の授業では、日常生活や社会の事象を題材にした問題を扱うよう求められることを指摘。「1カ月に1回でもよいので、生徒たちが楽しめたりさまざまな考え方ができたりと、自分で解いている実感を持てるような問題に取り組ませることが大切だ」と助言した。
 東山中学・高校の鶴迫貴司教諭は、さまざまな大学の過去問や自作の問題を提示しながら、大学入学共通テストと二次試験の傾向と対策法を解説した。留意点として、問題文上で解き方を誘導させる「言葉に流される数学」を指摘。問題文に惑わされず、複数の解き方を考えられるように、視点の変化を生むような問題を選び、生徒に解かせることを提案した。他にも、問題文の長文化や、定理を逆の方向からアプローチさせる問題などについても取り上げた。

大学
今後の個別試験などで講演

 文科省が示した2021年度からの「大学入学者選抜実施要項」の見直し予告を受けて、各大学では今後、個別の二次試験や教育をどうしていくのか。セミナーでは大学の分科会も設けられ、開催県の国立大学や都内の有力私立大学の担当者が講演した。
 各国立大学からは近年、利用が増えているAO・推薦入試の特徴などが、私立の早稲田大学からは、高校の新学習指導要領に対応した入試改革の現状などが紹介された。
 分科会で講演したのは次の16大学。
 東北大、慶應義塾大、埼玉大、東京大、一橋大、早稲田大、北海道大、九州大、広島大、横浜国立大、京都大、大阪大、金沢大、神戸大、千葉大、名古屋大

 各大学の分科会の内容は、10日付で掲載する予定です。

Topics

連載