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実践交流を図りながら、ICT活用の充実目指す

8面記事

ICT教育特集

教室外でのICT活用の様子(神戸市)

 新学習指導要領では、学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実がうたわれた。現状では、先導的に取り組んできた学校や自治体では更なる実践研究の充実が図られている一方、緒についたばかりの学校も少なくないことから、環境整備の事例や教育実践の交流が求められている。近畿地方では、各教育委員会や研究団体が平成28年度に「近畿ICT教育研究会」を設立。積極的な実践交流と授業研究・開発に取り組んでいる。兵庫県神戸市と大阪府箕面市も同研究会に加入。実践交流に取り組みながら、学校現場の充実を目指している。

教職員の負担軽減を実現
ICTがあるからこその授業開発に期待
兵庫県神戸市

気賀 諭志 神戸市教育委員会指導主事
気賀 諭志 神戸市教育委員会指導主事

 校内LANを平成15年度に整備し、17年に各小中学校のPC教室整備完了、21年度には小中学校の教員に、1人1台のパソコンを配備した神戸市は、校務の情報化に早くから取り組んだ自治体の一つだ。その枠組をKIIF(神戸市情報教育基盤サービス、Kobe city Information Infrastructure service For educationの略)と命名し、教職員用とPC教室のパソコン等約2万台をネットワークで結び、学校HPやEメール等の共通ソフトの提供、情報セキュリティの確保などを一括したサービスとして提供している。このサービスにより、教員はノートパソコンを校外(自宅等)でも安全に使用している。
 それまでの校務は、学校ごとのローカルルールがあり、ICT活用も部分的だったため、重複作業等も多かった。しかし、校務支援システムの導入によって、校務の標準化・効率化が図られ、教職員の負担軽減につながっているという。
 26年度からのKIIF2では、教員のパソコンを2in1ノートPCに更新し、教材開発や実践研究と授業への活用を、より積極的に行える環境として整備している。
 KIIF2では無線LANの導入も想定しており、アクセスポイントを学校が独自に整備する動きも増えているという。
 一方で、パソコンの使用にはフリーズなどのトラブルはつきもの。しかし、それを嫌って授業へのICT活用に二の足を踏む教員も少なくないと、気賀諭志指導主事は語る。「これまで校内のさまざまなことは教諭で対応してきた。パソコンが動かないといった、子どもでは対応できない事にも教職員は対応しなくてはならない。しかし、その対応ができないので一部の教職員は敬遠している面もあるようだ」という。しかし、慣れることで回避できるトラブルが多いのも事実であり、「先生方には『トラブルを恐れないで』と呼び掛けている」そうだ。
 ICTの学習への活用は、例えば、学習支援ツールによる学習プリントの作成や動画による解説などの利用が可能。すべての中学生にIDとパスワードを発行し、あらゆる端末からのアクセスを可能にしており(本年度から一部の小学生にも実施)、「マイページ」に学習履歴を残して効率的な学習を促している。
 今後は各教科学習のなかでのICTの活用が期待される。近畿地方の各教育委員会や研究団体が、教育の情報化や知識・実践の共有を目的に28年度に立ち上げた近畿ICT教育研究会にも積極的に参加。現在、各教科の授業研究・開発に取り組んでいる段階だ。
 ただし、「近畿ICT教育研究会に参加して、他の自治体の実践を参考にしたいと思っても、環境が整備されていなければ、現場の教職員の取り組みも続かない」と気賀指導主事。授業研究と環境整備はICT活用の両輪だといえる。
 「ICT活用によって授業の進め方が微妙に変わる」と気賀指導主事は指摘する。「これまでは資料を読み込むことが主だったが、ICT活用によって資料(情報)を目的に則して探したり作成したりするような授業も増えてくる」と語る。「一方通行の授業では学習塾の有名講師の授業にはかなわない」と気賀指導主事。ICTがあるからこそ出来る授業の開発が期待される。

全市立小4―6年生にタブレット
新たな環境で学習可能に
大阪府箕面市

岩永 泰典 箕面市教育委員会指導主事
岩永 泰典 箕面市教育委員会指導主事

 大阪府箕面市は、この夏休み明けの8月27日に、全市立小学校の4―6年生の児童全員に、キーボード付きタブレット端末を1人1台配備。各教室に保管庫を備えるとともに、全教職員には新しいタブレット端末かノートパソコンを配備した。ネットワーク環境も新たにクラウドサービスを整備。2学期から全市立小学校でICTを活用した新しい環境での学習が可能になった。
 クラウドサービスは、これまでの教職員が業務上利用するフォルダに加え、授業用フォルダ、仮置き場、児童生徒個人用フォルダを設けた。タブレットやノートパソコンはUSB等の外部記録媒体は使えないが、仮置き場にはどんな端末でもアクセスが可能だ。例えば、教職員が自宅で作成した授業用のデータ等を仮置き場に保存し、学校でタブレット端末に取り込むことが可能だ。USB等の持ち運びによる事故を防ぐことにもつながる。
 同市は、全小・中学校全クラスに電子黒板を設置しているが、新たなネットワークへの更新に伴って、電子黒板の使い方も変更。これまでは教職員が電子黒板の画面をタッチして操作していたが、2学期からは、新たに配備されたタブレット端末の画面をタッチして操作するようになった(電子黒板にはタブレットの画面と同じ画像が表示される)。教室のどこにいてもデジタル教科書の操作ができるようになり、また、電子黒板を操作しながら机間指導も行える環境だ。
 とはいえ、新しい環境での授業がスタートして、まだ2カ月弱。「教員がうっかり電子黒板の画面で操作しようとして、子どもたちに『タブレットを使って』と、促されることもある」(岩永泰典指導主事)。児童の方が新たな環境への慣れが早く、また、教職員も児童から逆に学ぶことも少なくないようだ。例えば、授業で児童たちに生物の様子を写真に撮ってくるよう伝えたところ、ある児童は想定外に動画を撮影。そこで動画も授業に取り入れたことで、より学習活動が深まったという。
 各校のICT環境が整ってきたことで、苦手意識のある教職員も使わざるを得なくなっている。同市では各校の担当者で構成する情報研究部会で実践の共有を行っている。ただし、担当者のスキルが上がるだけでは真の意味での教育のICT活用とはならない。「校内研修の充実も不可欠」と岩永指導主事。
 「タブレットはあくまでツール。授業内容によっては黒板や紙を使う方が効果的な場合もあるだろう。どういう使い方が有効か、さらに研究していきたい」と話している。


タブレットを活用した授業風景。子ども達から活用を促されることも

ICT整備と活用の最前線をテーマにした
パネルディスカッションを実施

 神戸市、箕面市共に「第2回関西ITソリューションEXPO」の特別パネルディスカッション「関西10自治体教育委員会が語る ICT整備・活用最前線!」に参加する。
 日時=11月7日(水)15:30~17:00※要申込
 ホームページ=https://www.edix-expo.jp/ja-jp.html

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