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歴史学者と読む高校世界史

14面記事

書評

教科書記述の舞台裏
長谷川 修一・小澤 実 編著
史学の研究成果と乖離、なぜ

 高校世界史は、社会科の選択科目として出発(一般社会必修。日本史、世界史、人文地理、時事問題より1科目選択・5単位)。第9章「『世界史』教科書の出発」に、まず目を向けよう。新制高校の発足で、旧制の高校や中等学校の東洋史、西洋史の科目は、世界史となる。世界史出発時は、教科書もない。
 話を戻す。本書は3部構成。「高校世界史教科書記述の再検討(一)」が第I部。古代イスラエル史の記述、中世ヨーロッパ、中・東欧、アメリカ合衆国と章立てして、教科書記述を吟味する。続く第II部が「高校世界史教科書記述の再検討(二)」となる。イスラーム史、日中関係、東南アジア、日本についての記述の検討について四つの章立てで、歴史学の専門家が論じる。教科書記述と、歴史学界の研究成果に乖離がなぜ生じるかだ。
 第III部が「高校世界史教科書の制作と利用」で、「『世界史』教科書の出発」「世界史教科書と教科書検定制度」や旧制高校入学試験に見る“関係史”、高校現場から見た世界史教科書などが論じられる。“教科書記述の舞台裏”が、本書の副題。歴史学者(大学人)を中心に、元教科書調査官、高校教員の執筆陣が、歴史教科書の記述を検討。教科書を通じて、国民の歴史観や歴史意識は形成される。これは超重要で、誰もが注意を怠らないこと。
(2700円 勁草書房)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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