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発達保障の道

12面記事

書評

歴史をつなぐ、社会をつくる
河合 隆平 著
障害児教育の歩みを描く

 発達保障の道。この道は1960年代から、多くの人々の手によって、営々とつくられてきた。その過程では、さまざまな苦労や困難もあった。障害のある子は就学猶予で学校に行けないという時代が、長く続いていた。障害のある子どもたちは、学校から排除され、発達の道を閉ざされていたのである。
 1970年、障害児教育を子どもの権利として捉える与謝の海養護学校が、京都府北部に開校した。1979年には、養護学校義務制が完全実施された。これは歴史の一局面である。こうした歴史を積み重ねながら、多くの子どもや保護者、教師が、歓喜したり、苦悩したりしながら歩んできた。
 本書は、このような発達保障の歴史の一コマ一コマを丹念にたどり、そこに内包されている人々の叡智と活動の成果を示したものである。第2次世界大戦前後から現代までに至る、多様な12のトピックスが取り上げられている。人間の願いや人権を大切にしながら、実践や活動を進めてきた人々の様子が、丁寧な史料分析に基づいて、鮮やかに描き出されている。
 歴史とは、決して過去のことではない。歴史とは、今にまで続くものであり、そして、未来を照らす。本書は、そのことの大切さを改めて教えてくれる。
 子どもに関わる多くの大人たちに本書を強く薦めたい。
(1296円 全国障害者問題研究会出版部)
(都筑 学・中央大学教授)

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