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本紙電子版PRし100キロのトレラン!Funtrails2018(10)―校長も教頭もみんな完走

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 埼玉県の西武鉄道秩父駅を土曜日の早朝、走り始めてから24時間。100キロ先のゴールまで残り10キロを切った。調子は悪くない。日の出の時刻を迎える前から山の尾根は明るくなる。
 5月に出場した別の大会では、夜明けまもなく、肝を冷やした経験があった。「熊」の登場だ。
 コースは違うが同じ埼玉県の山の中。明け方、選手の間隔がまばらとなり1人で静かに走っていたところで、頭から尻まで1メートルはあるほどの大きさの熊が岩の向こうに見えたのだ。
 一瞬のできごとだった。距離は10メートルほど先立ったか。ほぼ同時に互いの存在に気付いたようだった。
 本州に住む熊は「ツキノワグマ」。よほどのことがない限り、人間を襲うことはないとされる。だが、一部で、空き缶に残った清涼飲料水の味を知った個体や、偶然、人間と至近距離で鉢合わせした個体、子連れの母熊など、人間を襲うこともあるという。
 5月のこの日、出会った熊は、記者に気付くと、瞬く間に谷底へと駆け下った。足跡の響きはいつまでも耳に残った。
 11月の本大会も、「熊に注意」との標識を何度も見かけた。すっかり明るくなった90キロ過ぎ、「県民の森」(横瀬町)に入り、学習室・展示室などを備えた建物もあるが、その付近で目撃情報があったという。
 トレイルランニングならではの危険もある。歩行者と比べると、特に下りは移動速度が速く、熊に逃げてもらう時間がなくなってしまうことがあるからだ。そして、この県民の森からは、市街地に向けて一気に高度を下げていく。駆け下る際には転倒に加えて、熊と鉢合わせする危険がある。
 最後の山道を楽しんでいるかのような歩みで先を行く高齢の選手を抜くと1人旅が続く。ようやく町並みが見えたころ、2本足で駆け下る音が後ろから聞こえてきた。ランナーだ。道を譲る。
 もう熊の心配はなさそうだ。山道を終えて舗装路に出る。これまでの疲れをいやすかのように、ゆっくり走る選手、あるいは、歩く選手を抜く。先ほど、駆け下ってきた選手も、先を急ぐことはないようだ。順位を上げるつもりもなかったが、何人もの選手を抜いて、102キロの旅を終えた。27時間25分31秒。優勝者から12時間も遅いが、完走した437人の中では、ほぼ真ん中の228位だった。
 現職教頭として出場した鈴木さんも無事に完走を果たしている。
 最初に、このレースの記事が本紙に載ってから、うれしいお便りをいただいた。札幌市の特別支援学校に勤める校長先生も、この大会に出場し、完走を果たしたそうなのだ。
 当社がスポンサーとなって、この大会が始まって4年目が終わった。面白いご縁が広がっている。
 大会開催から1カ月。次の目標に向けて、走り続けている。100キロを超えた先にはどんな景色が見えるのだろう。次回は来年5月、初の100マイルレースに臨む。

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