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停電時でも利用できる防災Wi―Fiを指定避難所に整備

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導入事例
秋田県五城目町

 秋田県五城目町では、指定避難所となっている町民センター、屋内温水プール、広域体育館の3施設に防災Wi―Fiを整備した。平時には無料でインターネットが利用できる公衆Wi―Fiとして活用し、災害時には避難者が安否確認や災害情報の収集等を行う防災Wi―Fiへ即時切り替える。
 同町ではここ数年、大雨による災害が多発。もともと自然災害が稀な地域であったため、町内の指定緊急避難場所及び指定避難所には防災Wi―Fiの設備がなく、「整備を急ぐ必要を痛感していた」と渡邉彦兵衛町長は話す。
 今回の防災Wi―Fi整備では、町役場の公衆Wi―Fiで導入実績があり、信頼性と費用対効果の高さを実感していた(株)バッファローの製品群を採用した。また本整備は総務省の「無線システム普及支援事業費等補助金」を活用したため、補助金交付要件に適合した製品であることをメーカー側で確認している点も決め手となったという。
 まず多人数の同時接続が想定される屋内用無線LANアクセスポイントには、384台もの同時接続と高速通信を可能とする「WAPM-2133TR」を計10台を整備。屋内温水プールには、高温多湿の環境にも耐えうる「WAPM-1266WDPR」を採用した。そして町民センターにはネットワーク管理ソフトウェア 「WLS-ADT」を導入。スイッチを押すだけで公衆Wi―Fiを防災Wi―Fiに切り替えられ、災害発生時には専門知識を有する職員が不在でもすぐ防災体制へ移行できるようにした。
 また停電時にもこの3施設で防災Wi―Fiが利用できる環境も整えた。町民センターに備わっている太陽光発電システムと非常用電源装置を活用し、停電時には電源切替スイッチを押せば、町民センターからLANケーブル経由で隣接する屋内温水プールと広域体育館の無線LANアクセスポイントに電力が供給されるようにしたのだ。
 これは「PoE」(Power over Ethernet)と呼ばれる技術で、1本のLANケーブルでデータ通信と電力の両方を供給する仕組み。先の北海道胆振東部地震では北海道全域が一時停電するなど災害発生時の停電への備えが急務となっており、安価かつ短い工期でデータ通信と電力を供給できる環境を実現する「PoE」の需要は今後高まりそうだ。
 五城目町の防災Wi―Fiは昨年4月に運用が開始されたが、すぐに役立つ時が来た。翌5月に発生した集中豪雨で全町に避難勧告が発令された際、避難してきた約40人の町民に早速利用されたのだ。「避難所へ来てからも防災Wi―Fiで外部との連絡や情報収集が行えるので、町民の方々に安心感を与えられる」と整備にあたってきた町教育委員会の佐藤清彦・生涯学習課長も手応えを感じている。平時にも公衆Wi―Fiとして多くの町民に利用されており、本整備の効果は着実に上っているようだ。

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