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ブラック化する教育2014―2018

12面記事

書評

大内 裕和 著
現場の「いま」とその系譜は

 著者(中京大学教授、教育学、教育社会学)は、5人の対話者と“教育の現在”を鋭く考える(各章別)。教育の現場の“いま”と、そこに至るまでの系譜をたどる一冊。
 内容は4章構成。第1章が「『教育再生』の再生のために」と題して、斎藤貴男氏(ジャーナリスト・「機会不平等」の著者)、佐藤学氏(教育学研究者)と著者の対話。市場化する教育と現場はどう変わっているかだ。続く第2章は、宇都宮健児氏(弁護士)と著者の対話。新自由主義と奨学金、中間層の解体とブラックバイト問題、「受益者負担」幻想を超えるために―に焦点は結ばれる。
 そして、第3章が「『教育の病』から見えるブラック化した学校現場」である。内田良氏(教育社会学研究者)と著者との対話。組体操事故の展開、2分の1成人式と家族幻想、部活動の肥大化、教育を再・社会問題化する―など、理不尽さに耐え忍ぶことでいいかである。続く「『日常の戦争化』に抗する」(第4章)は、斎藤美奈子氏(文芸評論家・現代社会や政治への批評者)との対話。“自由化”“個性化”を問い直す、なぜ教育は貧しくなったのか、平和教育のこれから、「日常の戦場化」を問う―に話は及ぶ。
 いずれの章から読み始めても、浸り切れる一冊。「ブラック化する教育」(2015年刊)の続編として読みたい。
(1944円 青土社)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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