日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

一人ひとりをいかす評価 学び方・教え方を問い直す

16面記事

書評

C.A.トムリンソン、T.R.ムーン 著
具体的場面、問い掛けも提示

 本書の構成は、第1章 一人ひとりをいかす教え方▽第2章 評価と一人ひとりをいかす教え方 理解のための枠組み▽第3章 診断的評価▽第4章 形成的評価▽第5章 総括的評価▽第6章 一人ひとりをいかす評価と成績▽第7章 後ろを振り返り、前を見る―であり、評価の意味を根本から考え直そうという意図が流れている。
 多岐にわたる課題を整理し、児童・生徒に、具体的にどういう場面でどういう問い掛けをし、どう活動させていくか。教師はどんな資質を育てようと、どう活動するのか。それを提示し、私たちに刺激を与えてくれる本である。
 Facebook社のような動き、上司に部下が評価される旧来のシステムから、5~7人で行う研究発表会やディスカッションなどを経て、相互評価へと、やがて自己評価に至るシステムに移行しつつある昨今、評価される側のみでなく、評価する側の体験も大いに意味がある。その言及も期待していたが、あまり触れていなかったのが残念に思う。
 いずれにしても、働き方改革が、評価を変え、結局は各自の自己評価に至るものと思えば、本書の思想・意図は、これからを見るのに大きな働きをなすだろう。著者の「前を見る」という表現には、そういう意味があったのだろうか。じっくり読み込むべき本だ。
(2376円 北大路書房)
(関根 正明・元山形大学講師)

書評

連載