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国際交流を通じて拓く未来の可能性

企画特集

<家庭向けWeb特別版>
(1)学校内外での「学びの記録」活用へ
(2)国際交流は身近なところから(奈良 哲 文部科学省大臣官房国際課長)
(3)体験者に聞く、海外短期留学の魅力【親子座談会】

(1)学校内外での「学びの記録」活用へ
eポートフォリオを活用した取り組み進む

 学校では、2020年に新しい学習指導要領が小学校から順次全面実施となる。この新学習指導要領の柱となっているのが、改正学校教育法に示された「学力の3要素」だ。これまで議論されてきた「ゆとり」か「詰め込み」か―ではなく、新しい時代に必要となる資質・能力の育成をめざし、▽基礎的な知識・技能▽課題の解決に必要な思考力・判断力・表現力等▽主体的に学習に取り組む態度の3つの要素とこれらの学習評価の充実が掲げられている。

 これに関連し文科省では、大学入学者選抜において「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を適切に評価し、多面的・総合的評価の実現に貢献することをめざした取り組みを進めている。

 こうした取り組みのなかで2017年10月に開設したのが高校eポートフォリオ・大学出願ポータルサイトである「JAPAN e―Portfolio」だ。高校生が学校内外の活動をeポートフォリオとして記録、高校教員が確認し生徒とともに振り返ることができる。学校の授業や行事、部活動などを通した学びや自身で取得した資格・検定のほか、学校以外の活動の成果も記録する。学びや活動成果を積み上げていくことでeポートフォリオとして情報が蓄積され、将来的には大学入学時に利用することが可能になる。

 今後本格的に運用されるようになれば、子どもたちは広い意味での学びの足跡を基に進路選択をしていくことになるだろう。
 ※eポートフォリオは記録をデジタル化して蓄積するシステム。

(2)「国際交流は身近なところから」
(奈良 哲 文部科学省大臣官房国際課長)


 「グローバル人材の育成」「教育の国際化」…。なんだか難しい感じがしますね。また「留学」といっても、自分のお子さんや生徒には縁が遠いものと考えていませんか。まずは身近なところから世界に目を向けてみてはいかがでしょう。

 例えば、今、日本の公立小中学校には、10年前と比べると約2倍の外国人が在籍しています。そうした子どもの出身国について調べてみる、あるいは日本人と外国人の生徒が一緒に、平和や環境などについて考えてみるのはどうでしょう。親子で交流の機会を持つのも新しい発見があると思います。

 また、日本政府は、2018年から5年間で、アジアから1000人の高校生を受け入れ、ホームステイをしながら日本の高校に通ってもらいます(「アジア高校生架け橋プロジェクト」)。各学校や家庭が高校生を積極的に受け入れるのも、いわば海外に行かなくても国際交流ができるわけですから、とても効果的だと思います。

 さらに、今年はG20首脳会合(サミット)が大阪で、また全国8か所で大臣会合も行われます。ラグビーワールドカップでは、全国12の開催都市で20チームが熱戦を繰り広げます。サミットと同じ課題について学校で議論してみる、あるいは、好きなチームを見つけ、一緒に応援してみる、そういったことで世界へ目を向けるきっかけを作ってはいかがでしょうか。

 海外で活躍する人材を育てることはもちろん重要ですが、国内にいながらにして、多様な文化的背景や価値観を持つ人たちと、いかに共存していくか、そして、世界のさまざまな問題を自分のこととして捉え、解決しようとする態度を育てていくということが重要です。そして、身近な国際交流で世界に関心を持つようになったら、海外に行くことを応援しましょう。やはり実際に日本と世界の違いを肌で感じることは、何事にも代え難い経験です。最近は留学を支援するプログラムも増えてきました。例えば、官民が協力した枠組みである「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」では、大学生だけでなく高校生の留学も応援していますし、期間も内容も多岐に渡っています。

 さあ、学校や家庭で、また企業の方々も、子どもや若者の夢やチャレンジを後押ししませんか。

(3)体験者に聞く、海外短期留学の魅力
ホームステイに行ってよかった!みんなのエピソード【親子座談会】

 今後ますますグローバル化が加速する社会で生きる子どもたちには、多様な考え方や文化を受け入れ、その中で自分の考えを積極的に発信していくリーダーシップやコミュニケーション力が求められている。こうした中、海外への短期留学・ホームステイは、その国の生活習慣をリアルに感じる体験になるとともに、日本を外から見ることによって日本人としてのアイデンティティや自分の将来を考える貴重な機会になる。ここでは、そんな海外留学の魅力について体験者(小・中・高校生)とその保護者に話を聞いた。

<参加者(学年は取材時)>
 斉藤翠穂さん(小学5年)、斉藤さんのお母様
 伏見颯太さん(中学1年)、伏見さんのお母様
 Y・Nさん(高校2年)、Y・Nさんのご両親
 ※記事中敬称略


「自分はスゴイ!」と思えるようになった
斉藤翠穂(さいとう・すいほ)さん/滞在先=ニュージーランド(10日間)


さまざまな国の人との交流で視野が広がる
伏見颯太(ふしみ・そうた)さん/滞在先=イギリス(16日間)


日本と違う環境だからこそ、意味がある
Y・Nさん/滞在先=オーストラリア、カナダ、イギリス(各9日間)

 ―ホームステイした国と、参加しようと思った理由について教えてください。

 N 英会話のスキルやコミュニケーション力をアップさせたいと思い、中学2年の時に初めてオーストラリアに留学し、そのあとカナダ、イギリスに行きました。小さい頃から海外の映画を観て、外国人にあこがれがあったことや、一足先に姉が留学していたことが大きかったと思います。

 伏見 僕はイギリスのロンドン。おじさんが海外で暮らしていてかっこいいと思っていたのと、英語が本当に通じるのか、授業で会話しても実感が湧かなかったからです。

 斉藤 私はニュージーランドのオークランド。日本とは言葉も生活もまったく違う場所に行ってみたかったのと、自分の英語力を試してみたいと思ったからです。

 ―それぞれ立派な動機ですね(笑)保護者としては不安もあったのではありませんか?

 N母 最初は心配でしたが、今では安心して送り出せるようになりました。本人も2度目からは気持ちに余裕ができたようで、荷物も必要最小限で旅立てるようになっています。

 斉藤母 不安という点では、ふだんは自分の身のまわりの世話もできないのに、外国の家庭に泊まって失礼のない生活ができるのか気がかりでした。

 伏見母 小さい時からどこへでも一人で行きたがる性格だったので、留学に行くならできるだけ早い方がいいと思っていました。実際に行かせてみると、本場のハリーポッター・スタジオにも観光に行けて、ロンドンがとても気に入ったようです。

子どもがチャレンジする気持ち大切に

 ―ホームステイで期待したことは?

 N母 期待ということではありませんが、日本人の多くは外国や留学に対する意識が閉鎖的というか、最初からうちの子には無理と決めつけてしまう親が多いような気がします。

 伏見母 そうですね。昔に比べて環境も整っているので、留学に限らず子どもが「チャレンジしたい」と言えるような雰囲気をつくってあげることが大切だと思います。

 N父 海外に行って何を学ぶとか、勉強ができるようになるとかではなく、自然に仲間が集まってくるような「人間力」を身につけてほしいと思っています。

 N 現地の家庭の暮らしを直接見られるのが、ホームステイの魅力。食事や生活スタイルもちょっと適当なところがあって、いかに日本が丁寧で素晴らしい国であるかを再認識することができました。

異文化に触れる体験を通じて

 ―滞在先でのエピソードを教えてください。

 斉藤 南半球にあるニュージーランドは日本と季節が逆と聞いていたので、夏服を持っていったら寒くて風邪をひいちゃいました。面白かったのは白夜で、南極に近いから夜の9時を過ぎてようやく日が暮れていきます。また、ショッピングモールに行くと、ターバンを着けた人がいるなどいろんな国の人がいて楽しかったです。ホストファミリーはアジア系の人たちで、一緒に暮らしてみると日本と同じような文化だと感じました。

 伏見 滞在した家庭には子どもが2人いて、一緒にゲームで遊んだりして楽しかった。

 伏見母 帰国後は、ホストファミリーからクリスマスプレゼントにもらった日記帳で日記をつけたり、英語の文法を学習したりするなど“英語が好き”という気持ちが続いているようです。

 N 私もカナダに行ったときがクリスマスシーズンでした。カナダではクリスマスが大事な日だから、毎日夜はクリスマスの映画を観るなど1週間前から気分を高めていくんです。それで当日を迎えたら家族みんなで集まってブランチに出かけるなど、日本と違う過ごし方を知れたのがよかったと思います。

 ―生活で何か困ったことはありましたか?

 伏見 シャワーの水圧が低いのは困りました。

 N 途中で冷たくなるのはいつも。でも、逆に不便なところがなかったら行かないですね。日本と同じ環境では意味がないと思うから。

留学を通じて新たな自分を発見

 ―留学後の変化で気づいたことはありますか?

 斉藤母 単語だけしか話せなかったと思いますが、それでも通じたことがうれしかったようで、もっと英語をがんばりたいと話しています。

 伏見母 家でも英語でしゃべったりしているので、うらやましいとさえ思います。

 伏見 高校生になったらもう一度ロンドンに行って、どれだけ英語力が成長したのかを試してみたいです。

 N 海外に行くと自分が好きになる。言葉も習慣も違うから、日本と違って周りにどう見られるかを気にする必要もないし、自分の居場所が広がった気がしますね。周りの人への感謝の気持ちを忘れなくなりました。

 斉藤 英語に不安があったけれど、行ってみるとすぐに慣れて「自分はスゴイ!」と思えるようになりました。帰国したあとも、同じクラスの子がホームステイすることになって相談されましたが、「会話は単語をつなげれば大丈夫だよ」とかアドバイスしちゃったりして。

 ―ホームシックにはかかりませんでしたか?

 斉藤 ホームシックにはならなかったけれど、一緒に行った子と夜などによく話をしていたのがよかったのかも。

 伏見 ぼくもホームシックにはならなかった。ほかの子もなかったと思います。

 N 新しい経験ばかりで、ホームシックになる暇もないのかもしれません。

多様な価値観を理解すること

 ―日本に帰ってきて、海外との違いを感じたことはありますか?

 斉藤 外国の人に比べて日本人はまじめで、考え方が常識に包まれていると思った。町でわからないことがあって困っていると、みんな親切に教えてくれるのには驚きました。

 伏見 スーパーに買い物に行っても、レジの人が当たり前にあいさつしてくるなどフレンドリー。英語も、それまで日本の授業はつまらないと感じていたけれど、向こうでイギリスの歴史を英語で学んだのが楽しかったので、好きになりました。

 N 街ですれ違ったとき、ニコッと笑ってくれる。笑顔っていいなと思いました。さよならするときにハグしてくれるのも親しみが持てますね。

 ―これからは海外のいろんな国の人と交流することが必要と言われていますが、留学した経験者としてはどう思いますか?

 斉藤 学校にもオーストラリアから転校生が来ました。これからは外国の人がたくさんやってくると思うので、みんなが英語を分かっていればもっと早く仲良くなれると思います。

 N 教室で英語を話しにくい雰囲気がある。もっと話す機会を設けて、恥ずかしがらずに話せる環境になったらいいと思います。日本の英語教育が良いとか悪いとかではなく、日本人というベースがあった上で、いろんな価値観があることを理解することが大切。そのためには留学はいい経験になるのでは。

 伏見 英語が苦手な子がいても、みんなで協力して話せるようにしてあげたらいい。海外に行った経験がないと日本がすべて正しいと思いがちになるので、さまざまな国の人と交流があった方が視野は広がると思います。

 ―今日はこれから留学したいと思っている人や、海外に興味がある人にとって大変参考になる話がたくさん聞けました。ありがとうございました。

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